今回は、すでに物件を借りているオーナーから追加で別物件の賃貸借契約を結んだ際、そのオーナーのマイナンバーを取得するための手続きが再び必要になるのかを見てみます。※本連載は、立川・及川法律事務所の代表弁護士、立川正雄氏の著書『不動産業者のためのマイナンバーQ&A』(にじゅういち出版)の中から一部を抜粋し、不動産の賃貸に関するマイナンバーの取扱い方法をQ&A方式でご紹介します。

同一オーナーから店舗に加えて事務所も貸借

 Q 

当社は、個人オーナーの店舗ビルを借りていたため、オーナーのマイナンバーを教えてもらっていた。ところが、同じオーナーの別のビルを事務所として新たに借りることになった。この、事務所ビルの支払い賃料に付き、支払調書を税務署に提出しなければならないが、改めて、本人確認等の取得手続きをしてオーナーのマイナンバーを取得しなければならないか?

 

 A 

1.前の店舗賃貸借契約を締結した際に支払調書作成事務のために提供を受けたマイナンバーについては、後の事務所の賃貸借契約に基づく賃料に関する支払調書作成事務のために利用することができる(『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)』15頁)。ただし、先に取得したマイナンバーを事務所の賃料支払いの支払調書にも使うことを、オーナーに通知しておかなければならない。その理由は以下の通り。

 

2.マイナンバー法では、後から借りた事務所の家賃についても、借主法人は支払調書の提出義務があるので、最初に店舗を借りた際に取得した貸主のマイナンバーを、後から借りた事務所の家賃の支払調書発行のため利用するのは合理性・必要性がある。そのため、上記ガイドラインは、利用を認め、マイナンバー法違反ではないとの見解を示している。

 

3.なお、本書『不動産業者のためのマイナンバーQ&A』(にじゅういち出版)附属の〔資料4〕「平成27年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引、第4不動産の使用料の支払調書」の4記載例を見ていただくと分かるが、同じ支払者が同じ貸主に店舗と事務所賃料を支払う場合、1枚の支払調書に書くことができる。

個人情報保護法の規定にも注意が必要

4.ただ、個人情報保護法では、「この店舗の支払い家賃について支払調書を税務署に提出するため」と利用目的を説明して個人オーナーのマイナンバーを取得している。しかし、店舗に加え事務所の家賃の支払調書に利用することは、当初説明した利用目的と異なる。

 

5.個人情報保護法では、当初説明した利用目的と関連性を有する範囲内で利用目的を変更する場合は、変更後の利用目的の範囲内で利用することができる(個人情報保護法第15条第2項)。

 

6.ただし、利用目的を変更した場合は、利用目的の変更を本人宛に通知等を行うことが必要である(個人情報保護法第18条第3項)。そのため、前記結論になる。

 

個人情報保護法第15条(利用目的の特定)

2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。同法第18条(取得に際しての利用目的の通知等)

 

3 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表しなければならない。

本連載は、2016年11月19日刊行の書籍『不動産業者のためのマイナンバーQ&A』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産業者のための マイナンバーQ&A

不動産業者のための マイナンバーQ&A

立川 正雄

にじゅういち出版

いよいよ2016年の支払調書および2017年2月からの確定申告時にマイナンバー記載が義務付けられます。マイナンバーは、不動産取引にも大きな影響があります。 そこで、売買・賃貸など不動産取引を行う法人・個人の方、賃貸管理…

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