成功すればスリランカで3番目に大きい商業銀行の誕生となるNDB銀行とセイラン銀行の合併話が、銀行業界に衝撃を与えています。今回は、この合併の実現可能性について、景気局面とM&Aの関係という面から見ていきます。

合併の噂によって両行の株価が高騰

NDB銀行によるセイラン銀行の買収の詳細は、不透明かつ憶測に留まっている。おそらく時期尚早だと判断しているのか、いずれの銀行も公式な声明を出していない。どんな吸収合併劇であれ、動いた金額こそが成功を測る指標となるが、NDB銀行の経営陣はこの合併に要する大金を負担する気があるのだろうか。そして、議決権株の23.4%を保有するIshara Nanayakkara氏を筆頭としたセイラン銀行の主要株主たちは、これを良い取引だと思うのだろうか。

 

セイラン銀行の株は、簿価の約1.5倍の値で取り引きされている(2015年6月24日付の値は102.8スリランカ・ルピー)。2015年5月までの1年間で、市場全体では11%の値上がりに留まったものの、セイラン銀行の株は、その値を遥かに超え60%値上がりした。セイラン銀行の株価上昇には、合併の噂が一役買っている可能性がある。

 

不良債権を多く抱えるにもかかわらず、セイラン銀行の株が手頃な価格で取り引きされることはほとんどあり得ない。簿価の1.5倍となるセイラン銀行の株は、最低でも自己価格で、高額時には1.25~1.57倍の価格で取り引きされている。不良債権は未だに多く残っているが、それも急速に減っている。残された不良債権は2件の高額融資が主な原因となっているが、それらも最終的には全部が不良債権として残ることはない見通しだ。

 

セイラン銀行は新たに75の支店を立ち上げようとしており、そのうち25支店は今年中に開く予定だ。新設されるこれらの支店は利益を圧迫するが、合併後のNDB銀行とセイラン銀行にとっては資産となる。セイラン銀行は157支店、NDB銀行は83支店構えている。

将来の成長を見越してリスクを取れるか?

価格交渉はいつだって議論が絶えないものだが、NDB銀行の経営陣は、企業買収が景気の4つの局面で起きるものだと理解するべきだろう。

 

第1の局面は経済低迷時だ。自暴的になり株を売る者が現れると、買い手にとっては買い得のチャンスとなるわけだが、この状況がいくつかのM&Aを起こす。しかし、現在のスリランカ経済はこのような苦境をもたらすほど低迷してはいない。

 

第2の局面は経済回復期で、低額融資が取引の活性化を後押しする。スリランカのM&Aは現在このステップにいる。通常、この時期の経営陣は慎重だ。ほとんどの取引は高リスクだと見なされ、勇気ある買い手以外の者は逃げ腰になる。

 

NDB銀行のRajendra Theagarajah氏は間違いなくその勇者のひとりだ。今年3月に、NDB銀行はセイラン銀行の株価が106スリランカ・ルピーとなったタイミングで、全株の8.7%を買い進めた。また今年6月には「向こう1、2年に予測される成長を後押しするため」として、NDB銀行は100億スリランカ・ルピーまで借入を増やした。

 

とは言え、交渉の基本となるのは資産から負債を引いた価値である簿価だ。国際的には、好調な銀行の買収では、簿価の2倍の価格になることもある。


次回は、M&Aが起き始めた今、この波の展望についてご紹介します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年5月に掲載した記事「NDB’s Rajendra Theagarajah is Aiming to Shake Up Banking」を、翻訳・編集したものです。

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