課税の網、オーナー社長の「個人資産」も照準に…「1億円の壁」是正、高所得者への課税強化は不可避の流れ【税理士が概要と対策を解説】

課税の網、オーナー社長の「個人資産」も照準に…「1億円の壁」是正、高所得者への課税強化は不可避の流れ【税理士が概要と対策を解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

現在政府内で議論されている「金融所得課税の見直し」。2026年以降の議論を俯瞰すると、影響は法人のみならず、オーナー社長個人の資産までもが対象となっていることが明確です。制度の背景と今後の方向性を整理しながら、経営者がこの状況をどのように捉え、行動するべきかを見ていきましょう。本記事は税理士法人グランサーズ代表社員の辻哲弥氏が解説します。

一定以上の所得水準で実効税率が低下する「逆転現象」を是正

まず前提として押さえておきたいのが、「1億円の壁」と呼ばれる問題です。これは、所得税の構造に起因する現象であり、一定以上の所得水準になると、実効税率がむしろ低下するという逆転現象を指します。主な理由は以下の通りです。

 

●給与所得などは累進課税(最大45%)

●一方、株式の配当や譲渡益は原則20.315%の分離課税

 

つまり、所得が大きくなるほど、給与よりも金融所得の割合が高まり、結果として税率が下がるという構造です。

 

この点については、政府税制調査会の議事録でも繰り返し指摘されています。特に、高所得層における税負担の公平性という観点から、見直しの必要性が強く議論されています。

現在の税制は「働く人ほど不利、資産を持つ人ほど有利」な構造

政策的な背景は明確です。キーワードは「公平性」と「再分配」です。

 

現在の税制は、労働による所得は高税率、資産による所得は低税率であり、この差が拡大することで、高所得者ほど資産所得にシフトし、結果として税負担が軽減されるという状況が生じています。

 

この構造を放置すれば、「働く人ほど不利で、資産を持つ人ほど有利」という状態が固定化されるため、政府は見直しを避けられないと考えています。

議論の具体的な方向性とは?

現時点では確定した制度ではありませんが、議論されている方向性として、主に以下が挙げられます。

 

●金融所得課税の強化(税率引き上げ)

●総合課税との一体化(累進課税への取り込み)

●高所得層に対する追加的な課税措置

 

特に注目すべきは「一体化」の議論です。仮に金融所得が総合課税に組み込まれた場合、

 

●所得水準に応じて最大45%の税率が適用される可能性がある

●現行の約20%から大幅な負担増となる

 

という可能性があり、これは、資産運用によるリターンに直接的な影響を与えます。

オーナー社長が留意すべき点

この議論を「資産家の問題」として捉えるのは危険です。なぜなら、多くのオーナー社長は、会社を通じて資産を形成し、最終的に個人で回収する構造にあるからです。

 

具体的には、配当、株式売却(M&A・事業承継)、不動産・金融資産への投資などがあり、いずれも金融所得課税の影響を受ける領域です。

 

つまり「会社で利益を出す→個人で回収する→回収した部分への課税が強化される」という流れになります。

 

これは、単なる税率の話ではなく、「最終的な手取り」に直結する問題です。

預貯金中心の資産保有に見る「課題」

ここで、もうひとつ重要な論点があります。それは、資産の保有方法です。

 

多くの経営者は、現預金として資産を保持し、必要に応じて投資するというスタイルを取っていると思われます。しかし、この戦略には2つのリスクがあります。

 

①実質的な資産価値の目減り

インフレ環境下においては、現預金は実質的に価値が減少します。仮に年2%のインフレが続いた場合、10年で資産価値は約20%目減りする計算です。

 

②課税タイミングの集中

現預金は「課税を繰り延べている状態」に過ぎません。

 

将来的には「配当として取り出す」、あるいは「投資に回して利益を得る」といったタイミングで、まとめて課税される可能性があります。特に金融所得課税が強化された場合、その時点での税率が適用されるため、結果として高い税率で一気に課税されることも考えられます。

経営者が取るべき基本スタンスとは?

金融所得課税の留意すべき点として、個人レベルでのコントロールの難しさが挙げられます。

 

法人であれば、経費計上や投資タイミングの調整、事業構造の見直しといった対応が可能です。一方で、個人課税については税率のコントロールはできず、さらには制度変更の影響を直接受けることになります。

 

そのことから、重要になるのは「どのようにして影響を抑制するか」という視点であり、こうした環境下で求められるのは、短期的な節税ではなく、中長期的な戦略だといえるでしょう。

 

具体的には、

 

●資産の分散(現預金・金融資産・事業投資)

●回収タイミングの分散

●法人と個人のバランス設計

 

といった観点で、全体最適を図る必要があります。重要なのは、「税率が変わる前提」で意思決定を行うことです。

 

税制は固定ではなく、常に変化します。その前提を織り込まずに資産形成を行うこと自体がリスクになります。

まとめ…個人資産も含めた「キャッシュ戦略」の設計が必要に

金融所得課税の見直しは、単なる一時的な議論ではなく、構造的なトレンドです。

 

●高所得者への課税強化

●税負担の公平性の是正

●資産所得へのアプローチ

 

重要なのは、法人だけでなく、個人資産も含めてキャッシュ戦略を設計する必要があるという点です。これらは今後も継続的に議論されるテーマであり、オーナー社長にとっては無視できない問題だと理解・認識しておくことが大切です。

 

 

 辻 哲弥
公認会計士・税理士
税理士法人グランサーズ 代表社員

 

 

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