天才ニュートンも大損したバブル崩壊
次に、お金に関して人類が何度も経験してきたビッグイベントとして、「バブル景気」という現象にも着目してみたいと思います。歴史を遡ってみると、早くも1630年代には、オランダでチューリップの球根が高騰するというバブルが発生しています。チューリップの球根が投機対象となり、価格が急騰。空売りや先物取引まで発生しました。
当時の大工の年収が250ギルダーだったのに対し、バブルの頂点だった1637年にはチューリップの球根1個に5,200ギルダーもの値がついたといいます。しかし、同年にはバブルが崩壊し、多くの人が損害を被りました。
さらにその約90年後には、フランスとイギリスで相次いで大規模なバブルが発生します。
投機ブームに湧くイギリスで起きた「南海泡沫事件」と呼ばれるバブルでは、驚くべきことに、あの偉大な科学者アイザック・ニュートンですら大損をしました。彼は「天体の動きなら計算できるが、人々の狂気までは計算できなかった」と嘆いたといいます。
そして、私たちが生きる現代においては、バブルはより複雑で悪質な(?)性格をもち合わせるようになります。第13章でも触れますが、アメリカの住宅バブルの崩壊が引き金となった2008年のリーマン・ショックは記憶に新しいところです。世界を揺るがした大事件の背景には、返済できる見込みのない住宅ローンが「数字のマジック」を使って有望な金融商品に転換されて売り出されていたという問題がありました。
このように、人類は性懲りもなくバブルを繰り返してきました。
バブルの崩壊とともに大損をした人は、金に目がくらんだ自分を責めるでしょう。しかし、心のどこかには、「あの時売っていれば儲かっていたのに……」という気持ちが残っています。
他方で、投機に参加せず損をしなかった人は、バブルで損をした人々の窮状を目にして「金儲けのお祭り騒ぎに参加しなくてよかった」と胸を撫で下ろすでしょう。しかしそういった人々の心の奥底には、たとえわずかでも、うまく売り抜けて大儲けをした人をうらやむ気持ちが必ずあるはずです。
バブルの夢にほだされて破産した人を蔑む感情と、バブルで大儲けをした人をうらやむ感情。このどちらも、人間の正直な感情といえます。バブルという現象は、人間のこのアンビバレントな感情をどちらも飲み込んで養分としながら、多くの人を巻き込んでいくのです。
品川 皓亮
株式会社COTEN 歴史調査チーム
