今回は、激務で知られる資料調査課(コメ)において、職員たちのモチベーションを支える原動力などを見ていきます。※本連載では、元国税実査官・佐藤弘幸氏の著書『国税局資料調査課』(扶桑社)の中から一部を抜粋し、一般的に知られることがないその「国税局資料調査課」の仕事の実態を紹介します。

現場担当者に開かれた「出世の道」のひとつ

国税局のエリートコースは、法人課税課などの主管課や総務・人事だと述べたが、現場業務でも出世の道がある。それがコメなのだ。コメのプロパーになるには、3年以上の在籍が必要といわれる。プロパーになれれば、実査官☞主査☞総括主査☞課長補佐☞指定官職☞資料調査課長という道が開かれる可能性がある。

 

税法の勉強が苦手で、法律解釈を扱う審理畑は難しいとか、組織運営ができるようなキレものでない人間でも、調査現場で成果を上げれば、幹部登用への道が残されているのだ。出世すれば、当然給料も上がる。

 

コメにいれば出世できるかもしれない―。悪質納税者をただすという本来の目的は当然だが、一方で出世がコメの男の原動力となっている。一日当たり14時間以上も働くモチベーションは、コメにいれば勤務評定が高くなるということに尽きる。

 

一般職員のスタートは誰もが税務署。成績を残していかないと、国税局や国税庁に上がることはできない。

 

大きな組織なので、当然、派閥はいろいろある。ただ東京国税局の場合は、組織が大きい分、捨てる神あれば拾う神もあり、干されても地道にやっていれば自分を拾ってくれる上司が現れることもある。復活が可能なのだ。私もそういう経験がある。

 

ところが地方の国税局にはそれがないので、主流に乗れなければそれで終わってしまう。30代も半ばを過ぎると、その後の人生が決まってしまうのだ。

コメの男以上にデキる「コメの女」も

東京国税局は標準的な能力というよりも、特殊能力を買ってくれるところ。それがあれば、主流で生きていくことができる。

 

競争が激しいので、平均点を取っているだけでは上に行けない。他人より抜きん出た能力がひとつふたつないと、人の上に立つことはできないのだ。

 

20年前、コメには女性実査官がほとんどいなかった。国税局員だけで調査チームを構成する課税第二部第三課に一人いたことがあるが、税務署との合同調査で署員を指揮する任務にあたる課税第二部第二課には一人もいなかった。

 

ところが、女性の社会進出を促す世の風潮の影響なのだろう。最近では、6人に1人くらいの割合で配置されている。一つの課に4〜5人程度の割合である。「お姉ちゃん人事」と揶揄されることもあるが、今ではコメの男以上にデキる「コメの女」もいる。

 

コメの女は、コメをキャリアのひとつとして着実に出世していく。局内の出世のバロメーターである係長ポストに就く率は男性よりも高いといわれる。将来の幹部候補生であるのは間違いない。

国税局資料調査課

国税局資料調査課

佐藤 弘幸

扶桑社

マルサでも手出しできない巨悪脱税事件では、ときに国税OBが裏で糸を引いていることもある。それらを調査する国税局資料調査課、通称「コメ」の真実を初めて明らかにする!

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