分母の拡大で低下する国民負担率
国民負担率とは、国民所得に対する税金と社会保障負担の割合を示す指標のこと。2026年度は税負担が28.0%、社会保障負担が17.6%と、前年度より低下する見込みだ。しかしこれは、負担額そのものが減ったわけではなく、賃上げや企業収益の増加によって国民所得という分母が大きく伸びたことによる比率の低下に過ぎないとの指摘がある。
名目GDPは内閣府の推計によれば、2026年度に691.9兆円へ拡大する見通しだ。これに伴い、国民所得も増加すると考えられるため、税や社会保険料の負担額は増えても、国民負担率は低下する構造が生まれている。
年収の壁引き上げが負担率に与える影響
所得税の課税最低限(非課税となる年収の上限)の引き上げも、国民負担率の低下に影響しているようだ。基礎控除等の見直しにより課税開始年収は引き上げる方向で議論が進んでおり、与党税制改正大綱では2026年度以降、段階的に178万円まで引き上げる方針が盛り込まれた。これにより課税額の伸びが抑えられ、統計上の負担率低下に寄与しているとされる。税制上の制度変更が、分母の拡大と相まって数字上の「負担軽減」を生んでいる。
潜在的負担率は依然高水準
将来世代が負担する財政赤字も加味した潜在的国民負担率は48.4%に上る。前年度の実績見込み49.1%からわずかに低下しているとはいえ、国民所得のほぼ半分が公的負担として想定される構造は変わっていない。
国民負担率の低下が一時的な統計上の変化に過ぎないことを示しており、実際の負担感や将来世代の財政リスクを考慮すれば、安心できる状況ではないだろう。
国際比較では中位でも安心できない理由
国際的にみると、日本の国民負担率はOECD加盟国38ヵ国中では中位の水準だ。2023年時点では、英国が49.8%、ドイツが53.4%、スウェーデンが55.2%、フランスが64.8%と日本を上回っている。ちなみに米国は34.2%と低水準である。
だが、社会保障の給付水準や可処分所得、物価などを考慮すれば、日本の負担感は中位とはいえ決して軽くはなく、生活実感とのギャップも大きいと言えるだろう。
さらに長期的な視点では、少子高齢化が国民負担率に大きく影響していることも見逃せないだろう。
医療・介護・年金などの社会保障費は高齢化に伴って増大し、過去には消費税率引き上げとあわせて国民負担率を押し上げてきた。欧州諸国の手厚い社会保障制度との差は徐々に縮まりつつあり、日本でも社会保障負担の重みが数字以上に家計に影響しているとの分析がある。これにより、単純な数値や国際順位だけでは、国民の実感に基づく負担感を読み取ることは難しい。
負担低下は一時的か、将来への課題
国民負担率の低下は、あくまで国民所得の伸びという分母の拡大による見せかけ上の変化によるものであり、負担そのものが減ったわけではないと考えるべきだろう。
社会保険料や税金の増加により、可処分所得への圧迫感は依然として存在し、加えて、少子高齢化や社会保障費の増大、金利上昇による国債費の膨張など、将来に向けた財政的課題も残されている。負担を抑えるのか給付を見直すのか、あるいは経済成長によって吸収するのかといった政策選択が、今後の日本経済と国民生活の行方を左右することになりそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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