資産を守りながら、娘の選択を支える方法
こうした状況でファイナンシャルプランナーとして最初にお伝えしたいのは、感情的な対立を深める前に、まず「資産と家族関係を整理する場」を設けることの重要性です。
具体的には、以下のような対応が考えられます。
まず、遺言書の作成と見直しです。現時点で公正証書遺言がない場合、早急に作成することを勧めます。特に「誰になにを、どのような条件で残すか」を明文化しておくことで、将来的な相続トラブルを防ぐことが可能です。孫への財産移転については、娘を通じた形にするか、孫の誕生後に暦年贈与(年間110万円の基礎控除枠)を積み重ねていく方法が現実的でしょう。
なお、教育資金の一括贈与(最大1,500万円非課税)という制度もありますが、2026年3月末で適用期限を迎えることが決まっており、今後の税制動向を注視しながら専門家に相談するべきです。
次に、生前贈与の活用です。まず娘への暦年贈与(年間110万円の基礎控除枠)を早めに開始しましょう。娘は法定相続人であるため、2024年1月からの税制改正により相続開始前7年以内の贈与は相続財産に「持ち戻し」加算される対象に拡大されています(改正前は3年以内)。できるだけ早い時期から計画的に始めることが肝心です。
一方、孫への暦年贈与は、孫が相続や遺贈(遺言による受遺者指定)によって財産を取得しない限り、原則として7年持ち戻しの対象外となります。ただし、遺言で孫を受遺者に指定した場合や、代襲相続・養子縁組で法定相続人となった場合はこの限りではありません。遺言と贈与を組み合わせる場合は特に注意してください。これは通常の贈与においては相続税対策上、大きなメリットになります。
孫が生まれてからは、必要な都度、教育費を支払う「都度贈与」も非課税の範囲で活用できます。扶養義務の範囲内であれば贈与税はかからないため、制度の期限に縛られず必要なタイミングで孫の教育費・生活費を支援することができます。ただし、贈与したお金を預貯金や投資に回した場合は非課税の対象外となる点に注意が必要です。
さらに、家族信託の検討も有効です。哲郎さんの資産管理の主導権を維持しながら、娘や将来の孫に段階的に資産を渡す仕組みを整えることができます。信頼できる専門家を交えた話し合いの場があれば、感情的な溝も埋まりやすくなります。
後日、橘さんは筆者にこう話してくれました。
「娘が生まれたとき、私は泣きました。あのときと同じように、孫が生まれたときも泣くんでしょうね。ただ、それまでに、できることは全部やっておこうと思っています」
愛する娘の選択を受け止めながら、家族と資産を守る。それは感情だけではなく、知識と準備によって初めて実現できることです。まだ間に合うタイミングだからこそ、一歩を踏み出してほしいと思います。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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