二世帯住宅に対するニーズは増えているという報告も
二世帯住宅そのものについてはご存じの人が多いかと思いますが、念のために確認しておくと、一般的には「一つの建物に親の世帯と子の世帯の二世帯の家族が住む住宅。親と子の世帯がそれぞれ独立した生活ができるものをいう」(『大辞林』)などと説明されています。ちなみに「二世帯住宅」の名称は、1975年に発表された旭化成ホームズの「ヘーベルハウス」という商品の呼称として初めて使われたといわれています。
共働き世帯の増加や高齢者の同居志向の高まりを背景に、二世帯住宅での暮らしを希望する人の数は増えているとの指摘もあります。たとえば旭化成ホームズにより設立された親子同居の専門研究機関「くらしノベーション研究所」のまとめたレポートでは次のように述べられています。
「最近、土地価格が落ち着いているのにもかかわらず、二世帯同居希望者の増加がうかがえます。厚生労働省の『国民生活基礎調査』では、1986年の調査開始以来下がり続けていた三世代世帯(生計が一体の同居)の構成比率が2008年に初めて上昇しています」(『ヘーベルハウスの二世帯百科』より)。もしかしたら、「そういえば、最近、うちの近所でも二世帯住宅を建てているなあ」という人もいるかもしれません。
まずは「資産の組換え」による節税効果を理解する
そもそも、この二世帯住宅が、どのような仕組みで相続税を軽減する効果をもっているのでしょうか。二世帯住宅の節税効果について十分に理解する前提としては、まず相続税対策の手法の一つである「資産の組換え」について理解しておくことが必要となるでしょう。
資産の組換えという言葉は、一般的には不動産投資の場面で耳にする用語かもしれません。たとえば「郊外の土地を売って、都心の土地を購入する」ケースのように、資産価値をより高めるために保有する不動産を入れ替えることが「資産の組換え」の典型例として紹介されています。
この資産の組換えは、実は相続税対策の手法としても非常に効果的です。というのは、相続税の計算上、相続財産はどのような形で存在しているかによって評価額が大きく変わることになるからです。たとえば、同じ1億円の資産でも、現預金の場合には100%のまま、土地の場合には時価の約80%で評価されることになります。
したがって、被相続人が生前に現預金を1億円もっていた場合、相続が発生した時にもそのままの状態であれば1億円として評価されることになります。しかし、その1億円を生前に土地に変えていれば(土地を購入していれば)、相続時には、約8000万円の評価額となり、現預金でもっていた場合に比べると約2000万円も相続税の対象となる資産の額が減少するのです。