前回に引き続き、「子世帯のみが住宅ローンを使って二世帯住宅を建てた場合」を紹介します。今回は、父所有の土地の上に二世帯住宅を建設した場合、資金はいくら必要なのかを見ていきましょう。

必要資金の計算では「平均余命」を考慮

二世帯住宅を建てるうえでは、親世帯の今後の生活資金を計算することが重要となります。まずは父親、母親2人の生活費です。父親Aは65歳であることから、今後の平均余命を考えて、下記の図表1のような計算結果となりました。

 

[図表1]父親が84際になるまでの夫婦2人の必要資金

 

夫婦2人の生活費を現役時代の80%で計算すると、月額28万円と年金の受給金額では月に1万円不足することになります。また、旅行代金や孫への贈与資金等で1500万円は資金をとっておきたいという意向ももっていました。したがって、この段階での必要資金は約1728万9000円になります。

 

次に母親Bが一人になった時の計算を行います(下記図表2参照)。

 

[図表2]母親がひとりになってからの必要資金

 

父親Aの平均余命が約19年なので、父親Aが仮に84歳で亡くなった時、母親Bは79歳であり、平均余命は12.26年となります。年金額は12万円となりますが、生活費も17万5000円に下がります。

 

生活費の不足額が月額5万5000円となり、仮に平均余命の92歳で亡くなるとすると、必要資金額は1109万1000円程度。上記の1728万9000円と合わせても、2838万円程度(約2900万円)の資金は今後の生活費のためにとっておかなければなりません。

 

以上から、二世帯住宅の建設費として、所有財産(現預金)5500万円からこの2900万円を差し引いた2600万円までを使うことが可能となります。

建築費の見積もりでは「付帯工事費用」も忘れずに

次に建築資金を計算してみましょう。

 

二世帯住宅は個々の構造にもよりますが、キッチンやバス、トイレ等を親世帯、子世帯ごとに設置する場合には通常の場合に比べて建築費用がかかることになります。仮に坪単価60万円とすれば、1階30坪(約99平方メートル)、2階30坪の合計60坪の建築費は以下のような計算式で導き出すことができます。

 

60万円×30坪=1800万円(1階)

60万円×30坪=1800万円(2階)

合計3600万円

 

このように、このケースでは建築費が3600万円かかることになりました。そして、親世帯、子世帯双方で1800万円ずつ負担することになりました。

 

親世帯は、負担する1800万円を現預金5500万円の中から支払う予定です。なお、建築費の見積もりを行う際には、インテリアや追加工事等の付帯工事費用もしっかりと見積もっておくことが重要となります。

 

また、既存の住宅の取り壊し費用300万円のほか、住宅建設中は近くの賃貸物件で生活をしなければいけないので、その引っ越し費用や賃貸料も考えておかなくてはなりません。

 

仮に工期が6か月(工法や時期によって違いがある)で、月15万円の賃貸アパートに引っ越したとします。敷金2か月、礼金2か月で、敷金については半分が戻ってくるとすれば、それらの費用は下記の計算式で求められることになります。

 

6か月+2か月(礼金)+1か月(敷金50%)=9か月

15万円×9か月=135万円

 

これに引っ越し費用30万円も加算すると、165万円がかかることになります。

 

また地鎮祭や上棟式などを行う場合は、それらの費用も必要となりますし、さらに近隣への挨拶に持参する手土産代や、電話工事費(NTTやケーブルテレビ)なども考えなければなりません。

 

なお、このケースでは、Cさんに300万円の住宅資金を援助することも決めました。結局、親世帯は贈与資金も含めて合計で2565万円の負担となりましたが、老後資金を見越した予算2600万円以内にどうにか収まりました。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

親子で進める二世帯住宅節税

親子で進める二世帯住宅節税

斎藤 英一

幻冬舎メディアコンサルティング

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