インドで走り続ける「ニッポン車」
全盛期よりも多少の競争力が落ちたとはいえ、トヨタを筆頭に自動車産業は今日でも日本のお家芸です。今のところ唯一の基幹産業と言えるでしょう。日本はインドの自動車産業にとって最も重要なパートナーの一つでありまして、両国は経済連携協定(EPA)を締結しています。
スズキ、ホンダ、トヨタらがインド市場に積極的に参入し、現地生産を進めています。スズキ(インド内では合弁企業のマルチスズキ)がインドで快進撃を続け、一時はシェア50%を占めるほどに大成功しているという話を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
遡れば1980年代前半に、スズキがインド国営のマルチ・ウドヨグ社と合弁したことから始まります。
僕がデリーの街中でウーバー配車(スマフォアプリで依頼するタクシーです)を依頼すると、控えめに言っても5割以上の確率でマルチスズキに乗ったドライバーが「ハイSir!」とやってきます。
2024年度マルチスズキの推定年間純利益は約2,460億円(約1,370億ルピー、1ルピー=1.8円で計算)、スズキ本社のマルチスズキ株式保有比率は58.19%です(2023年11月24日に従来の56.48%から株式追加取得)。
スズキ本社がマルチスズキから純粋に配当を得るという仮定に立ったとしても(実際にはそんな単純なことはしませんが)、インド内法人税(軽減税率22~30%程度)や非居住者配当源泉徴収税率は20%(日印租税条約により10%に軽減?)などを考慮し超簡便に計算すれば、約2,460億円×70%×58.19%×90%=約900億円の配当をスズキは名目上得ることができます。
ただし、この数値は配当性向を考慮していないもので、目一杯配当すれば、という仮定です
スズキ本社に支払われた金額は1,000億円以上
報道によれば、2022年度にマルチスズキが支払った配当総額は約300億ルピー(約540億円)だったとされ、これは当期純利益の約30%ですので、配当性向を調整すれば、計算上約2,460億円×30%×58.19%×90%=約386億円の配当になります。
実際に2022年度は約168億ルピー(約300億円)がスズキ本社に支払われたそうです。配当を日本に移転する場合には配当金不算入で5%課税や越境送金手数料などがかかってきますし、そもそも戦略的重要拠点と見なすインド内で再投資する事業メリットが多分にあるので、単年の配当云々で長期的リターンを計算するのも意味が希薄なわけですが、一つの参考数字として考慮できます。
さらにスズキ本社は、マルチスズキを戦略的な国際市場への部品輸出拠点(トライアングルトレードも含む)として利用したり、マルチスズキへの技術供与で利益を上げたり(例えば、2022年度は約400億ルピー=約720億円のロイヤルティ料)、インド内でのその他事業進出からも売上増加を期待することができます。
そのためスズキ本社は本年度にマルチスズキを通じて少なくとも1,000億円から千数百億円程度の現実的な利益、便益を得ていると考えられます。
スズキ本社(連結)の2025年3月期通期業績が売上収益5兆8251億円、営業利益6,428億円、当期利益(非支配含む)5,297億円・親会社株主に帰属する当期利益4,161億円と発表(2025年5月)されている金額の規模を考慮すれば、そのうちのマルチスズキのスズキ本社に対する貢献度の高さが窺えるでしょう。
