(※写真はイメージです/PIXTA)

14億人市場のインドで、年間1,000億円もの利益を上げるスズキ。デリーの街中で車を呼べば「5割以上の確率」でスズキが来る背景には、先人が築いた「信頼」という最強のアドバンテージがあります。本記事は、中川コージ氏の著書『インドビジネスのオモテとウラ 14億人市場の「世界でいちばん面倒くさい国」』(ウェッジ)より一部を抜粋・編集し、インドの自動車産業の状況について解説します。

インドの自動車産業でも「EVシフト」が鍵

そして、これからはEVシフトの波の乗りこなし術が問われます。今後も安定的に日本の自動車関連企業がインド内でシェアを確保できるかは、EV化社会に対しどれだけ適応できるかということになりそうです。

 

日本国内ではややもすると、右派を中心に、「EV産業はヨーロッパと中国が仕掛けた非合理的な概念」「宇露戦争でエネルギー安全保障環境が厳しくなった今や、EV社会はオワコンだ」といった風潮がありますが、メガサプライヤー含めすでに世界規模のサプライチェーン全体がEVシフトしている中で、「EVオワコン」説は幻想でしょう。

 

良かれ悪しかれEV化社会は避けられず、自動車生産企業にとっての勝負は、EVを重視するか否かではなく、社会のEV化「速度」を分析する優劣が反映されるだけに過ぎません。

 

例えば、10年で世界5割のEV化なのか、25年で世界5割のEV化なのかといったシナリオのどちらに賭けるのか、移行中間フェーズの対応はどんなエンジン、モーターでいくのかが大手企業戦略の選択であって、「EVオワコン」説が選択肢にあるわけではありません。

 

2024年3月期の連結決算によると、自社製品ラインナップのEVシフトが緩慢だったトヨタの売上高が45兆953億円、営業利益は5兆3,529億円、そして当期利益は4兆9,449億円となり、いずれも過去最高を記録しています。

 

ただしこれはトヨタがEV化を単純忌避したから叩き出した最高益ではなく、他社に比べてトヨタはHV開発に経営資源を投下しており、同時に宇露戦争などの影響により世界規模でEVシフトが低速化したため、トヨタの生産販売戦略がグローバルな需要にちょうどマッチした結果ということになります。

 

一方で、EV化にフルスロットルで資源投下したヨーロッパの自動車企業勢は痛手を受けています。

インドが求める社会の変化

インド政府は「電気自動車の迅速な普及と製造促進(FAME)」政策を導入し、2030年までに新車販売に占めるEVの割合を30%に引き上げる目標を掲げ、EVの普及を加速しています。

 

補助金や税制優遇策が実施され、まだまだ十分とは言えないもののEVの充電インフラ整備も進めていまして、EV生産企業としては、タタモーターズやマヒンドラのようなインド資本企業がEV市場での競争力を高めつつあります。

 

余談になりますが、インドのクラシックな雰囲気をビンビンに発している車種として有名なヒンドゥスタン・モーターズの「アンバサダー」。

 

1958年から生産が始まり、残念ながら2014年で生産中止になっておりますが、祖父の代から内燃機関自動車の関連零細工場を経営してきた僕としては、このフォルムは萌えます。

 

2022年にヒンドゥスタン・モーターズ(の親会社)がプジョーと協力し「アンバサダー」のEV版、「Ambassador2.0(仮称)」の開発を進めていると報じました。続報が待たれるところです。

 

次ページ日本人のインドでの評価は高い

※本連載は、中川コージ氏の著書『インドビジネスのオモテとウラ 14億人市場の「世界でいちばん面倒くさい国」』(ウェッジ)より一部を抜粋・編集したものです。

インドビジネスのオモテとウラ

インドビジネスのオモテとウラ

中川 コージ

ウェッジ

もう間もなく日本のGDPを抜き去る勢いの、世界随一の成長市場、インド。この14億人市場の巨大な需要による引力に、多くの日本企業が惹きつけられています。 「インドビジネスチャンスの波に遅れてしまってはマズイ。とりあ…

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