「痛恨の判断ミス」――佐々木さんの後悔
「息子が2社目を辞めたと聞いて、一度帰ってきたらどうかと言ったのが大きな間違いでした。家にいれば家賃も食費もかからない。その甘えが引きこもりにさせてしまったのかもしれません」
そう後悔を滲ませる佐々木さん。すでに働かなくなって1年超。働かない息子が奨学金を返せるはずがありません。老後は病気や家の修繕に備え、貯蓄を守りながら暮らすつもりでした。しかし、300万円を超える奨学金の残債を肩代わりすれば、その計画は崩れます。
「当面、私が立て替えています。これからも長引けば支払いの猶予や減額の申込みをさせたいと思います。この状況が、早く終わればいいのですが……。息子に早く働けと言っていますが、動く様子はありません」
佐々木さんが抱えたのは、奨学金の返済だけではありません。息子1人増えた分の食費、日用品費、医療費なども上乗せに。慎ましくも穏やかな老後が、静かに遠ざかっていこうとしています。
奨学金返済の重さ、先々への影響を理解して借りること
大学生が利用する代表的な奨学金が、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金。「令和4年学生生活調査」によると、昼間部の大学生の約55%が奨学金を利用しており、2人に1人が借りている計算になります。
JASSOの奨学金には返済不要の「給付型」と、返済が必要な「貸与型」があり、貸与型は無利子の第一種と、有利子の第二種に分かれています。
第二種で月10万円を4年間借りた場合、借入総額は480万円。年利1%で月約2万2,000円、2%なら約2万4,500円の返済となり、返済期間は20年に及びます。収入が少ない人にとって負担は軽くなく、長期間にわたって続く点に注意が必要です。
特に貸与型の利用は一般的になっていますが、返済に苦労する人は少なくありません。実際、JASSOの調査では、奨学金を返済できない人は約3.6%。また別の調査では、返済について「苦しい」と感じている人が4割を超え、「かなり苦しい」と答えた人も2割に上っています。
返済が難しい場合、返還期限猶予や減額返還といった制度もありますが、その分、完済は先延ばしになります。本人が40代・50代になっても奨学金の返済を続けるケースも少なくありません。
また、親が「子どもが返すから」と考えていても、佐々木さんのように自分に降りかかってくることも。奨学金は本人の老後や家族のライフイベントにまで影響する可能性がある「借金」である――借りる際には、そのことを忘れずに親子で話し合う必要があります。
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