遺産を巡る争い勃発…介護で壊れゆく兄妹の関係
その場は凍りつき、兄は静かにその場を立ち去りました。ところが、これだけで話は終わらなかったのです。
以前、母は「いつもありがとう。この家も残ったお金も、全部良子にあげる」と言っていました。兄も「それでいいから、母さんを頼むよ」と言っていたのです。
もちろん母の遺産だけが目的で介護をしてきたわけではありません。けれど、パートを減らした分収入も減り、母の生活費や入院時の雑費など、夫に相談した上で自身の家計から出したお金も少なくありませんでした。
「母の貯金を勝手には使えないし、立て替えていたんです。兄は、どれだけ私の負担を理解しているのか」
ところが、“凍り付いた施設”での一件の後、「老人ホームに入れたのだから、お前が全額遺産を受け取る権利はない」――兄はそう電話で告げてきたのです。
良子さんは気づきました。遺産について、書面に残すことをしていなかったのです。遺産は原則、法定相続人で均等に分けるのが基本。良子さんが介護で寄与分があったと主張するには、兄妹の同意が必要です。不服があれば、家庭裁判所に申し立てるか、弁護士を立てて争うことになります。
母とどう話すべきか? 場合によっては、兄との関係は取り返しにつかないほど壊れてしまうかもしれない。良子さんは、重い溜息をつくしかありませんでした。
介護を自分事に…「何もない今」だからこそやっておくべきこと
生命保険文化センターの資料によれば、年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合は年齢が高くなるほど多くなり、85歳以上では60.1%に。介護は決して他人事ではないことがわかります。
そして多くの場合、「近い」「動きやすい」という理由だけで、特定の家族に負担が集中します。その状態で感謝もなく、遺産の話まで出てくれば、関係が壊れるのは時間の問題です。
誰がどこまで何を担うのか。お金はどうするのか。 限界が来たらどうするのか。介護は、突然始まり、簡単には終わりません。「何も起きていない今」だからこそ家族間で話し合っておく必要があるのです。
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