会社がすべきセクハラ対策①~セクハラをさせない環境整備
冒頭で述べたように、佐川急便の被害女性はセクハラ発言をした加害男性に対してのみならず、職場であった佐川急便に対しても、使用者責任に基づく損害賠償請求を求めて訴えを提起しました。
その結果、佐川急便は、解決金70万円の支払いに加え、職場環境を整備する等の対応が必要となりました。
セクハラを防ぐためには、職場におけるセクハラを行ってはならない旨を就業規則に明記したり、どういう言動がセクハラになるのかを周知するための社内研修の実施、セクハラ被害に遭った場合の相談窓口の設置など、職場の環境整備をすることが大切です。
会社がすべきセクハラ対策②~速やかで適切な事後対応
■対応が遅れることによる重大リスク
過去の裁判例において、申告されたセクハラについて十分調査せずにあいまいなまま放置したとして、会社にセクハラの賠償とは別に、30万円の支払いが命じられた事案(平成21年10月16日大阪地方裁判所の判決)もあります。
このように、セクハラの被害申告への対応が遅れたり対応を誤ったりすると、被害者に「会社がセクハラを放置した」という悪印象を与え、うつ病になって休職・離職してしまうリスク、会社に対しても損害賠償請求をされるリスク、ひいては、社員全体の労働意欲の低下、会社に対する社会的評価やイメージの低下という重大なリスクを負うことになります。
したがって、社内でセクハラの被害を認知した場合、会社は速やかに適切な対応を取ることが重要です。
では、セクハラ被害の申告を受けた場合、会社はどのように対応すればよいのでしょうか?
この点に関して、会社には、①事実関係の調査を行う義務、②被害者が心身の被害を回復できるよう配慮する義務、③セクハラによって悪化した被害者の勤務環境を改善する義務、④被害者がやっかいもの扱いされ不利益を受けることがないように配慮する義務があるとされています(平成22年7月29日札幌地方裁判所の判決)。
したがって、セクハラの被害申告があったときは、被害者が加害者と顔を合わせなくて良いように被害者を加害者から隔離して、更なる被害を防いで被害者が心身の被害を回復できるよう速やかに配慮することが重要です。
隔離の方法としては、被害者と加害者を物理的に引き離すべく、被害者の意向を聞いたうえで別の事業所や別の店舗に配属することが望ましいです。
そのような隔離が難しければ、例えば、事実関係の調査が済むまで出勤を免除して自宅に待機させるなどの方法を検討するとよいでしょう。
■セクハラの事実について調査を行う
次に、会社はセクハラの事実関係について調査を行う必要があります。
具体的には、まず先に被害者から事情聴取し、被害者の同意を得たうえで加害者から事情聴取をします。被害者が女性の場合には、被害者からの事情聴取は女性が担当した方が、被害者へのストレスとなりにくくスムーズでしょう。
聴取した内容は、言い分の食い違いの確認や後日裁判になったときに備えて記録にとり、本人に内容を確認したうえで署名・捺印してもらいます。
また、当事者間でLINEやメール等のやり取りがある場合にはスクショ等の提出を受けて、両当事者の言い分に矛盾や不自然な点がないか検討します。
両当事者間の言い分に矛盾や不自然な点がある場合は、再度、両当事者から事情聴取をしたり、被害者の意向を確認したうえで関係者や目撃者からも事情聴取します。
