「ママよりも年収の高いパパのほうが偉いの?」
「ママよりも年収の高いパパのほうが偉いの?」
教育座談会で、あるお母さんが小学生の息子からこんな質問を受けてドキリとした、という話を聞いた。
子どもはお金というモノサシを驚くほど素直に、そして残酷に使う。
パートタイムで働くそのお母さんは、「ママは家の中で大事な仕事をしているのよ」と、とっさに答えたそうだが、心にモヤモヤが残ったという。
子どもには悪気も偏見もない。ただ、今の社会の空気を、まっすぐに吸い込んでいるだけだ。年収の高い人が評価されるムードが、確かにある。
一昔前まで、お金の話はタブー視され、親の年収を子どもが知ろうとすること自体が珍しかった。しかし今では、テレビやYouTubeで「年収」や「最高月収」といった言葉が飛び交い、若くして数千万円を稼ぐ“成功者”が称賛される。そんな環境で育てば、息子さんが「お金を稼ぐ人が偉い」と感じても無理はない。
就職活動中の大学生からは、こんな相談を受けたこともある。
「やりがいのある仕事をしたいのですが、年収が低いとステータスが低く見られそうで心配で……」
彼は、生活のために稼ぎたいというより、人から低く見られたくない気持ちの方が強いようだった。
マッチングアプリでも、年齢や居住地と並び、「年収」は欠かせない項目だ。人がお金で値踏みされ、いつの間にか私たちは、「年収の呪い」に縛られている。

