今回は、インタビューを直に知った「トランプ氏の交渉術」を探っていきましょう。※本連載は、日本人として最初にドナルド・トランプ氏にロングインタビューを行った経験を持つ、植山周一郎氏(株式会社植山事務所・代表取締役社長/経営コンサルタント)の著書、『予言 ドナルド・トランプ大統領で日米関係はこうなる』(SDP)の中から一部を抜粋し、トランプ氏が大統領に選ばれた理由を検証します。

インタビュアーに気配りする余裕をみせる

「あなたは若き不動産王と言われているが、成功した秘訣は何ですか?」

 

私は最初から核心に迫る質問をしてみた。

 

「I've been very fortunate.」

(私は非常にラッキーだった)

 

「マンハッタンの不動産に投資したが、それが大幅に値上がりした。多くの日本の投資家も利益を上げた。成功するためには、幸運と努力と才能が必要だ」

 

彼の表情は柔らかだったが、自信に溢れていた。彼は続けた。

 

「不動産ビジネスで万人が成功するとは限らない。上手に交渉をできる才能を持った人がやれば成功するけれど、才能がない人がやると失敗するだろう。ゴルフでもテニスでも同じことだ。あなたがテレビインタビューをする才能があるようにね」

 

彼は私に気配りをする余裕をみせた。このあたりが、彼が「交渉の達人」と言われる所以かと私は感じた。

 

「不動産ビジネスで最も重要なことは何ですか?」

 

私は彼から成功の秘密を聞き出したかった。

 

すると彼はにっこり笑って、ゆっくりと同じ言葉を三回繰り返した。

 

「Location, Location, Location!」

(立地条件、立地条件、立地条件だ!)

 

つまり価格が高くても、立地条件の良い不動産に投資すれば、必ず将来値上がりして、儲かるということだ。それで彼がトランプタワーを五番街に建てた理由が分かった。

 

トランプタワーを建てるにあたり、彼は土地、建物、空中権を、三つの異なる会社と交渉をする必要があった。土地はエクイタブル生命保険(現在はアクサ生命保険)が所有、建物はボンウィット・テラーという高級デパートが所有。まず、この2社と巧妙な交渉を行い、契約を成功させた。

 

エクイタブル生命保険はこの560坪(六本木ヒルズの約2倍の面積)の土地を売る必要はなかったが、トランプ氏が提示した「トランプタワーの経営権の半分」という条件は断るにはあまりにも魅力的だった。

 

結果、トランプ氏は現金を1ドルも払うことなく、土地を手に入れた。次に、ボンウィット・テラーが経営難で急ぎ資金を必要としていたことをつきとめ、最低価格を交渉して1000万ドル(当時のドル円交換レート換算で約20億円)で建物を買い取った。

 

そのうえで、隣のティファニーと交渉して、空中権を500万ドル(約10億円)で買い取った。ティファニーは、将来にわたり高層ビルの建築を放棄したので、隣に建てるトランプタワーは、そこから望むセントラルパークの素晴らしい眺望を永久に手に入れたのだ。

トランプ氏の「特権意識」が見え隠れする発言も

彼はさらに続けた。

 

「どんなに才能があっても運がないと、不動産ビジネスでは大損をすることがある。だから自分は不況になった場合のために、あらゆる準備をして自己防衛に努めている。これは、ビジネスマンとしては非常に大切なことだ。攻めの経営をすることもあれば、時にはネガティブに考えることも必要だ」

 

彼の慎重な一面を見た思いがした。

 

「特に不動産ビジネスは難しい。才能がない人が手を出すと失敗するだろう。限られた人間だけが才能に恵まれていて、彼らが成功するのだ」

 

最後は彼の特権意識が見え隠れする発言で締めくくられた。

予言 ドナルド・トランプ大統領で 日米関係はこうなる

予言 ドナルド・トランプ大統領で 日米関係はこうなる

植山 周一郎

SDP

不動産王の最大の弱点は不動産!? 世界、そして日本に訪れる未来は── ドナルド・トランプに実際に会ってロングインタビューを行った植山周一郎が語る、第45代アメリカ大統領トランプの正体。 会ったときに感じた印象や当時…

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