高額納税者公示制度と著作権相続…長者番付から司馬遼太郎の遺産評価まで【国際税務の専門家が解説】

高額納税者公示制度と著作権相続…長者番付から司馬遼太郎の遺産評価まで【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて日本には、高額納税者を広く国民に公示する「高額納税者公示制度」がありました。通称「長者番付」と呼ばれ、1947年から2005年まで続き、芸能人や作家、スポーツ選手などの名前が新聞やテレビで話題となりました。制度は2005年に廃止されましたが、その背景には個人情報保護の観点や、寄付や商業的勧誘のリスクがありました。本記事では、長者番付の歴史と制度の背景、さらに作家・司馬遼太郎氏の遺産や著作権の相続評価を例に、相続税の計算方法や著作権評価の実務について整理して解説します。

高額納税者公示制度の歴史と背景

「高額納税者公示制度」は、所得や税額が一定額を超えた個人を公示する制度で、当初は所得1,000万円超が対象でした。1970年分では77,970人(納税者全体の1.7%)が対象となり、1982年分には所得基準による比率が6.7%に上昇しました。1983年分からは税額1,000万円超が基準となり、対象人数は65,000人(納税者比0.9%)に減少しました。

制度廃止の理由

2003年に制定された「個人情報の保護に関する法律」が制度廃止の背景のひとつです。公示により高額納税者が寄付や商業的勧誘のターゲットとなる事例もあり、当初の申告で公示対象にならない金額を申告し、後で修正申告するケースも見られました。

 

また、公示期間は毎年5月16日から31日までの2週間に限られ、税務署にコピーサービスがない時代には、ダイレクトメール業者が多数のアルバイトを動員して公示台帳を筆写することもありました。台帳の持ち去りを防ぐため、鎖でつなぐなどの対策が取られていました。

司馬遼太郎の遺産と相続税

作家の司馬遼太郎氏は1996年2月12日に逝去しました。相続税の公示制度により、1997年に遺産総額26億4,000万円が公示されました。その内訳は銀行預金20億1,000万円、著作権3億9,000万円、自宅の土地建物2億4,000万円です。当時の相続税・贈与税の公示要件は課税価格2億円超、遺産総額5億円超でした。

 

1989年の作家の高額納税者ランキングには、赤川次郎、西村京太郎、吉本ばなな、村上春樹、司馬遼太郎、池波正太郎などが名を連ね、司馬氏の所得税額は1億4,012万円でした。現在、旧宅跡地には公益財団法人司馬遼太郎記念財団が運営する司馬遼太郎記念館があります。

著作権の保護期間と相続財産評価

改正著作権法では、従来の50年から70年に保護期間が延長されました。これは、2018年12月30日に発効した「TPP11」(環太平洋経済連携協定)の影響です。

 

たとえば、1959年4月30日に逝去した永井荷風の著作権は、50年後の2009年に保護期間が終了しており、現在は保護を受けません。一方、1971年10月21日に逝去した志賀直哉は、改正著作権法により保護期間は70年です。

 

著作権は相続財産としても評価されます。国税庁の「財産評価基本通達148」によれば、評価額は以下の算式で計算されます。

 

年平均印税収入額 × 0.5 × 評価倍率

 

年平均印税収入額は、相続開始日の3年前までの印税収入を基に算出します。評価倍率は著作権に詳しい専門家の意見を参考に決定し、複利表を用いて将来の収入の現在価値を評価します。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録