今回は、海外企業との取引を「単発契約」で行う際の注意点を見ていきます。※本連載は、日本・ニューヨーク・香港という3つの地域で弁護士資格を持ち、中小企業の海外展開について豊富な支援実績を持つ国際弁護士、絹川恭久氏の著書、『国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと』(レクシスネクシス・ジャパン)の中から一部を抜粋し、法務部や顧問弁護士を擁しない中小企業経営層に対して、「海外進出時の基礎的な法知識」を分かりやすく解説します。

単発契約で注意したい「5つのポイント」

単発の契約について長く書いてしまいましたが、簡単に整理すると次のとおりとなります。

 

●契約書を作るより前に、商売の有利不利が決まってしまう。

 

●商売を有利にするためには、自社が売り手(モノ・サービスの提供者)なら、なるべく早くお金を受け取るべきであり、自社が買い手(モノ・サービスの購入者)なら、なるべく遅くお金を払うようにすべきである。

 

●訴訟や仲裁は取引金額が小さい場合の紛争解決としてはあまり役に立たない。

 

●訴訟や仲裁になる前に、それをできるだけ回避するための別の選択肢を検討するべきである。

 

●特に非日系の外国法人との取引では相手方の信用を十分調査するべきである。

輸出入契約のみならず、他の種類の契約にも応用可能

なお、上で列挙してきた理屈は、実は輸出入契約の事例にとどまらず、他の種類の契約(建築などの請負契約や各種サービス提供などの業務委託契約)でも同じ理屈が当てはまります。

 

したがって、種類が違う契約をする場合であっても、単発の契約については、上で述べたことの応用編として同じような考え方に従っていただければと思います。

 

これらの考え方を持っていただくことが、海外進出をする企業の経営者、現場の海外事業担当者による、いわゆる「リスク感覚」の習得になるのではないかと筆者は考えております。

国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと

国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと

絹川 恭久

レクシスネクシス・ジャパン

中小企業が海外展開を進めようとするとき、難関となるのは「進出しようとする対象国の現地法に基づいた、自社事業の法的整備」、そして「信頼できる提携先・アドバイザーの確保」です。しかし、国内にある公的な海外展開支援機…

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