前回に引き続き、海外企業との継続的な取引契約の失敗事例を見ていきます。※本連載は、日本・ニューヨーク・香港という3つの地域で弁護士資格を持ち、中小企業の海外展開について豊富な支援実績を持つ国際弁護士、絹川恭久氏の著書、『国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと』(レクシスネクシス・ジャパン)の中から一部を抜粋し、法務部や顧問弁護士を擁しない中小企業経営層に対して、「海外進出時の基礎的な法知識」を分かりやすく解説します。

売上げの落ち込みを理由に、支払いが遅れがちに・・・

海外企業との取引で「継続的な契約」を結んだ際の失敗例として、今回は、SF社の事例をご紹介します。

 

SF社は日系企業ですがタイの工場で主に日本市場向けの寝具を作っている会社です。近時日本市場向けの製品に人気が出て、香港に来る中国人観光客の間でもかなり売れ始めているということで、香港の小売店からも多数引き合いが来るようになりました。

 

SF社はいくつかあった引き合いの中でも、香港の有名なショッピングモールに出店しているE社のみに商品を納めることにしました。

 

商品は毎月E社の小売店から来る発注数に応じて、SF社のタイ工場から在庫品を送るというもので、取引当初のオーダー規模はせいぜい毎月50万円程度の規模でした。取引自体は工場在庫品の輸出入という単純なものでしたので契約書までは交わさず、E社からの発注書の送付とSF社のサインバックのやり取りのみで取引していました。

 

なお、取引当初は、E社がSF社製品の販促をかけるために資金繰りに協力してほしいと要求してきたため、支払いは商品発送後45日以内支払いとして、E社に有利な形にしてあげることになりました。

 

中国からの観光客の消費に支えられ、取引当初3年ほどは順調に取引を継続しておりましたが、3年を過ぎたころから中国経済が停滞し始めました。それとともに香港での売上げが徐々に悪くなり、E社からも売上げの落ち込みを理由に支払いが遅れがちになりました。

 

SF社としては何度かE社との取引を中止しようかと考えましたが、E社がいまだ有名ショッピングモールに店舗を構えていて簡単にはつぶれないであろうと考え、支払期間を延ばしながら取引を継続していくことにしました。

回収できたのは売掛債権の10%程度…

しばらくはそのように取引を継続していましたが、ある年の3月を境にE社からの支払いがぱったりとなくなってしまいました。

 

6か月にわたり、営業担当者が度々店舗やオフィスに督促に訪れて交渉をしたものの、結局E社から支払いを受けられなかったため、ついにSF社は裁判を見据えて弁護士を通じて支払いを督促する通知書を送ることにしました。

 

ところが督促書を送った1週間後に訪れたところ、E社のショッピングモールの店舗とオフィスはすでに改装されて無人の状態となってしまっておりました。

 

SF社の担当者は、こんなにもあっさり会社を畳んでしまうものかと呆然とすると同時に、最後にE社に訪れたときに「きっと来月には支払う」といっていたE社の経営者の顔を思い出し、だまされた気持ちになりました。

 

結局SF社はE社に対する売掛債権をもとにE社について破産の申立てをしましたが、残った売掛債権の10%程度が配当されたのみで清算が終了してしまいました。

国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと

国際弁護士が教える海外進出 やっていいこと、ダメなこと

絹川 恭久

レクシスネクシス・ジャパン

中小企業が海外展開を進めようとするとき、難関となるのは「進出しようとする対象国の現地法に基づいた、自社事業の法的整備」、そして「信頼できる提携先・アドバイザーの確保」です。しかし、国内にある公的な海外展開支援機…

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