夫の世話と、繰り返される質問に答えることが生活のすべて…認知症を患う90代夫を10年介護した80歳妻の嘆き。「老老介護」で追いつめられる介護者のリアル

夫の世話と、繰り返される質問に答えることが生活のすべて…認知症を患う90代夫を10年介護した80歳妻の嘆き。「老老介護」で追いつめられる介護者のリアル
(※画像はイメージです/PIXTA)

介護する側・される側がどちらも65歳以上のケースを指す「老老介護」。厚労省の調査によれば、2023年時点で介護をしている同居世帯のうち6割以上が老老介護をしているという。介護する側の精神的ストレスは想像できないほど大きく、その負担に心が耐え切れず凄惨な事件へと発展してしまうことも……。本稿では甚野博則氏による著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)から一部抜粋・再編集し、老老介護の深刻な現状について見ていく。

「どうしてこんな目に」…介護者の絶望

認知症の介護では、こうした小さなトラブルが日常茶飯事であり、それに対応する介護者の心の中にはストレスが積み重なっていく。

 

そのストレスがピークに達するのがとくに夜間だという。

 

寝静まるはずの夜も、夫は時折徘徊を始めた。扉に鍵をかける必要があるが、夫は外に出たがり、何度もドアノブに手をかける。そのたびに妻は目を覚まし、夫をベッドに戻す。こうしたことが一晩中続き、妻は一睡もできないことが多いという。

 

日中の介護と夜間の見守りの両方が重なることで、妻は自らの健康を保つことができなくなっていった。

 

夫の介護に没頭するあまり、自分の身なりに気を使う余裕すら全くなくなっていたという。自分がどれほど疲れているのかを感じながらも、誰にも相談できず、誰も助けてくれないという孤立感が一層強くなる。彼女の一日は、夫の介護で始まり、夫の介護で終わる。その繰り返しが続き、彼女は自分を失い続けていったという。

 

事態はさらに深刻化する。認知症の進行によって、夫は次第に暴力的な言動を取るようになったのだ。妻が一生懸命に介護をしているにもかかわらず、夫は突然怒り出し、物を投げたり、手を出すような仕草をしたこともあるという。介護する側からすれば、長年連れ添ったパートナーに暴言や暴力を振るわれることは精神的に非常につらく、心の傷が深まる。

 

妻は「どうして私がこんなことをされなければならないのか」と思いながらも、介護を続けるしかないという現実に直面していたと振り返った。このような精神的苦痛は、介護者を深い絶望に追いやっていく。

 

 

次ページ「介護をする前に殺そうと思った」

※本連載は、甚野博則氏による著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)より一部抜粋・再編集したものです。

衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!

衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!

甚野 博則

宝島社

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