部下のミスに対して上司はフォローしない!?
概して日本人は、先輩の言うことに対し、後輩はよく従います。厳しいところでは、先輩が黒だと言ったら、白でも黒だと言わなければならない場面があるかもしれません。
最近は実力主義を採用した企業が増えたため、後輩が先輩を追い抜いて出世することも珍しくありません。しかし、肩書きが先輩後輩関係と逆転した際、元の関係性が影響して、指示を出しにくいと感じる人もいるでしょう。
先輩をたてる文化は、日本人の中に「先輩は常にリードしていく存在であれ」という自覚があるからだと思います。実力で追い抜いてしまったとしても、相手のプライドに対しての気遣いが先行してしまうのかもしれません。
一方ミャンマーでは、先輩後輩、上司部下の上下関係はあるものの、さほど従順な関係ではないこともあります。なぜならば、「先輩でも間違えることはあるし、いい加減な先輩もいる」と考えているからです。
上の立場の目線も、日本とは少し異なるように感じます。日本では、先輩が後輩の面倒をよくみていたり、上司が連帯責任で部下のミスをフォローすることが多々あるでしょう。ミャンマーでは、上司が部下のミスに対して頭を下げに同行することは、あまりありません。
具体例で比較してみましょう。日本では、オーダーした料理に髪の毛などの異物が混入しているときなど、とても深刻なミスでなくても、店長がスタッフとともに頭を下げに来ることがあるでしょう。部下のミスは上司の責任であるという認識が、客側にも、店側にもあるからです。
対してミャンマーでは、店のスタッフが謝るだけだったり、たいしたことではないだろうと言い訳ですませてしまうことがあります。マンションの施工ミスによって建物が崩壊し、死亡者が出たなど、極めて深刻な事故でもない限り、上司が部下のミスに対してフォローをすることはないです。
文化の違いを認識し、少しずつ「日本流」の理解を得る
唯一、ミャンマーで日本に近い先輩後輩関係を感じたのは、元軍人同士のやりとりでした。その理由もまた、日本と関わりがあるものです。
太平洋戦争時、日本がビルマ(ミャンマー)を支配するために、日本軍がビルマ軍を指揮下に入れましたが、その当時の先輩後輩関係の指導が、現在のミャンマー軍に名残として残っていると言われています。太平洋戦争時に鍛えられた軍人たちは、後のビルマ軍事政権の主要メンバーとなり、今のミャンマーという国を形作ってきました。
こうした特殊な例を除き、文化が異なれば、人間関係の考え方にも相違が生まれます。日本に来て間もない外国人労働者に対し、日本流の先輩後輩関係は特殊なものに見えると考えるほうが無難かもしれません。
仕事を早く完璧に覚えてもらおうと、細かい作業や指示をしているだけでも、外国人労働者は「自分ばかり特別扱いされている」と勘違いしてしまうこともあります。外国人からみると、日本人の精神や行動には不思議な点がたくさんあります。逆もまた然り。お互いに「個」を尊重し、少しずつ「日本流」の理解を得ることができればよいのではないでしょうか。