ハードウエアセキュリティの技術は世界の半導体市場における競争力の一つに
多品種少量生産ゆえに利益の薄い「ロジック」型半導体の世界で、さらにセキュリティを追求するためには、半導体内部のセキュリティをつかさどる部分を標準化し、その標準化された回路を、設計IPの部品の一部として実装していくことが望まれる。半導体チップをめぐるセキュリティのさまざまな課題を実現していくためには、我が国がかつてのように半導体設計の分野で世界をリードする技術を持って、世界の市場に立ち向かっていかなければならないのである。
しかも、セキュリティに関する技術は、政治上の同盟国といえどもお互いに詳細な開示はしないのが市場の通例である。欧米と日本は、セキュリティについての標準を共有することはできても、その標準を実現する実装技術については、あくまで自国内に技術の蓄積を持ち、相互にライバルとして競争しあっている。その競争場裏で、我が国が地歩を獲得するためには、半導体設計の分野でのプレゼンスが不可欠である。
そしてセキュリティ技術を国内に持たない国は、他国のセキュリティ技術を受け入れて利用することしかできない。ハードウエアのセキュリティ技術こそは、世界の半導体市場における競争力の源泉の一つなのである。その意味で、ハードウエアのセキュリティ技術は、我が国の経済安全保障上の重要な要素であるといっても過言ではない。
ところが、我が国半導体の産業政策(出典:半導体・デジタル産業戦略 令和5年6月 経済産業省 商務情報政策局)を見ると、そこには「製造技術」に関する記載はあっても、「設計技術」という言葉はない。「ハードウエアセキュリティ」に至っては一言の言及もない。
TSMCの工場を日本国内に誘致し、あるいはTSMCに対抗し得る超微細製造工程の半導体製造工場を国内に建設することには数兆円規模の国費を投じても、「ファブレス」の売上高のシェアが世界の1%でしかない現実を直視するならば、我が国半導体設計技術の回復を図り、いまだ国内にわずかに残るセキュリティ技術のシーズを、再度花開かせることこそが、現在喫緊の急務であることを訴えて、本記事の結びに代えたい。
植村 泰佳
株式会社SCU 代表取締役社長
ICシステムセキュリティ協会 代表理事
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