本格的な「IoTの時代」が到来した2つの理由
ところが約20年弱を経て、2010年代半ば頃からいよいよ本格的なIoTの時代がやってきた。その理由は主に2つある。
一つには、人のインターネットがあまりに普及して、日常空間のそこかしこにインターネットの接続口が顔を出してしまっており、LANなどによる物の隔離が十分でなくなったことが挙げられる。
例えば昨今、医療施設で起きているランサムウエアによるセキュリティインシデント(病院の医療用システムが突然ダウンしてしまい、ハッカーから身代金を払わねば、システムを復旧させないという脅迫が行われること)のかなりの割合が、医療従事者のコンピュータのメール操作を通じた感染であるとされている。
これなどは一人の医療従事者がインターネット接続用のPCとLAN(病院内システム)接続用の端末とを2台机の上に持って操作していれば原理的には防げることなのだが、実際には1台のPCが両方に接続されてしまったために起きたことだといえる。医療従事者のPCがインターネットに接続してしまうと、病院システム本体に格納されている電子カルテや検査情報、患者の個人情報も、病院システムに接続しているMRIやCTその他の医療機器も、すべてインターネットにつながってしまい、LANによる隔離は機能しなくなる。期せずしてIoTの世界が実現してしまうのである。
もう一つの理由は、物同士の交信にインターネットを使うことが、経済的にも便利になったことが挙げられる。
例えば、これまでLANなどで隔離された世界に接続する物を制御するソフトウエアを更新するには、メンテナンスの技術者が直接システムの所在地に出向いて、更新作業を行っていたのだが、現在ではインターネットを通じた遠隔操作によってソフトウエア更新を行うほうがはるかに経済的効率がよいとされるようになった。
さらには、経済のグローバル化によって、一つの企業が同時に世界中の原料情報や在庫情報、為替情報などを管理し、AIなどを用いて瞬時に最適な生産計画をたてるためには、インターネットによる情報の統合が不可欠で、この場合もLANなどによって隔離された情報を間接的に集めるよりも、末端の機器の情報を直接に収集統合したほうが便利なのだ(余談だが、2020年代に入って新型コロナウイルスによるパンデミックに対抗するために、お隣の韓国や台湾がスマートフォン端末を利用したIoTを駆使して感染状況の的確な把握に努めたのに対して、我が国の保健所システムがFAXによる情報の縦割り報告に終始して、人のインターネットすら用いることができなかったことはよく知られている)。
そのような理由から、2010年代に入って物のインターネット接続が行われるようになり、かねて言われてきたIoT時代がいよいよやってくるようになったのだ。
植村 泰佳
株式会社SCU 代表取締役社長
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