(※写真はイメージです/PIXTA)

どんなに仲のいい夫婦でも、いつかはパートナーとの別れが訪れる。そんな万一のために、心の備えもお金の備えも必要だが、自営業の夫婦の場合は、しばしば備えが不足するケースが見て取れる。実情を見ていく。

夫婦二人三脚で「こだわりのカフェ」を経営していたが…

人生、これほどまでにつらいことがあるとは――。そういって目を伏せるのは、66歳の自営業の女性、伊藤真理さん(仮名)だ。長年夫婦で大切に守ってきた店が傾き、頼りの夫は闘病の末に死去。今後の人生について、思いあぐねているという。

 

これまで夫婦で大切に守ってきたのは、郊外にある、ささやかな展示スペースを設けた小さなカフェ。真理さんと夫の伊藤敦さん(仮名・68歳)は子どものない夫婦だったが、長年経営してきたこのカフェが「2人の子どものようなもの」だったという。

 

「店の窓辺には、切り絵やガラス工芸の作家さんに作品を展示してもらう、ちっちゃなスペースがあって。あとは木のカウンターとテーブルが少しあるだけの、小さな小さなお店です」

 

売上は決して多くなかったが、売り出し中のアーティストたちや常連客と交流する毎日はとても楽しく、充実していた。

 

「コロナを経て、経営はとても苦しくなりました」

 

今後の経営について頭を悩ませていたさなか、健康に大きな問題がないはずの敦さんが脳梗塞で倒れてしまった。

 

一命は取り留めたが、入院費に治療費に…と出費は増える一方。それでも真理さんは、看病の傍ら、生活費を得るためにひとり経営を頑張ったが、売上はさらに低迷。経営状況は悪化するばかりだった。敦さんはどうにか店に戻ろうとリハビリに励むも、なかなか成果は出ない。

 

そしてある日、真理さんが自宅アパートに戻ると、敦さんがキッチンで倒れていた。真理さんが不在のときに、2度目の発作が起きてしまったのだ。救急搬送されたが、残念なことに間に合わなかった。

 

周囲のだれもが「おしどり夫婦」と評していた真理さんと敦さん。最愛の夫を失った真理さんの悲しみは相当なものだったが、「これからの生活をどうするのか」というきわめて現実的な課題が突き付けられた。

 

もともと15万円弱の年金を受け取っていた2人だが、敦さんが亡くなったことで、真理さんが受け取る年金は、基礎年金プラスごく短い会社員時代厚生年金の月7万5,000円に減少してしまった。共済の死亡保障で約500万円を受け取ったが、店の赤字の穴埋めと敦さんの治療費のため、「ほぼゼロ」という厳しい状況だった。

 

■ 60代・生命保険の加入率

60代男性…85.8%
60代女性…86.5%

 

■ 60代・生命保険加入金額(全生保)

60代男性…1,071万円
60代女性…507万円

 

(出所:生命保険文化センター「2022年 生活保障に関する調査」)

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