税務調査で明かされた「秘密の贈与」
事件が起きたのは、昭一さんの死から約2年後の夏。相続税に関する税務調査が行われました。
「母から『調査があるから、立ち会ってほしい』と連絡が来て、姉と一緒に実家へ集まりました。調査官はすごく淡々としていて、私たちの生活や口座の動きを質問していきました」
ところが、午後の調査のなかで、調査官のひと言が静寂を破ります。
「奥さま、ご主人は生前、次女さんに対して多額の贈与をされていましたね?」
その場にいた全員が凍りつきました。
「なんでそんなことを淡々というのか……『ふざけるな!』と税務調査官にいうのを我慢していました。一方で、姉の顔をみるのが怖かったことを覚えています」
調査終了後、絵里さんが「さっきの話、どういうこと?」と静かに尋ねました。母・久美子さんが口を開き、事実を打ち明けました。家の購入資金に5,000万円の贈与があったことを。「別に気にしない」と絵里さん。しかしその後、絵里さんは真奈美さんや久美子さんとの連絡を断つようになったといいます。
その後、共通の知人から、絵里さんは不妊治療をしていたことを知らされます。家族は晩婚で子を望んでいないと思っていましたが、実は誰よりも子どもを望んでいたわけです。そのような状況にありながら、家族から贈与のことを秘密にされ、心に傷を負った絵里さん……税務調査をきっかけに、家族の関係は崩れてしまったのです。
国税庁によると、令和5年度に実施された相続税の税務調査では、8,556件の税務調査が行われ、そのうち7,200件で申告漏れを指摘。追徴課税額は735億円、違反件数1件当たり1,000万円以上の追徴課税がされたことになります。
生前贈与で気を付けたいのが、相続税における加算対象が2023年度税制改正で「3年間」から「7年間」に変更されたこと。2024年1月1日以降の贈与から適用が始まりました。また口座の名義人と実際にお金を出した人が違う預金である名義預金も相続税の税務調査で多く指摘されるところです。
一方で、相続税の税務調査で「秘密の生前贈与がバレる」というトラブルも結構多いもの。税務調査は家族の事情に特に忖度もせず、さらりと聞いてきます。それにより家族全員が知ることになるのです。
生前贈与は税金対策、という意味合いも強いものですが、一方で善意でもあるでしょう。そんな気持ちを無駄にしないためにも「秘密にしたいこと」が大切なのかもしれません。
[参考資料]
国税庁『令和5年 事務年度における相続税の調査等の状況』
国税庁『No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)』
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