春闘も大詰めとなり、昨年から続く空前の賃上げにより、新卒の初任給などが引き続き上昇する傾向が明らかになりました。新卒従業員に高い給与を支払うことは、人材市場や日本の企業全体にとってプラスに働くと、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長、福留拓人氏は述べています。今回は、新卒の給与上昇がもたらす人材市場への変化について、福留氏が詳しく解説します。
新卒の初任給は今年も上昇へ…「氷河期世代はどうする」の声もあるが、若者の賃上げを推進すべき理由【人材のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

今の企業に必要な「信賞必罰」の評価制度

今の企業にとって必要なのは、信賞必罰がはっきりしていて、より鮮明な結果を出せる評価制度です。特に大手企業に対して啓蒙されるべきは、老若男女問わず、急激な賃金の上昇カーブを描き、同時に猛烈な効果を発生させるダイナミックな評価制度です。

 

人事のバランスは、要するにメリハリなのです。実績や結果を出せば給与が上がり、できなければ下がる。それが原則です。

 

「翌年の税金はどうするのか」とか「不安定な雇用環境は人材の流出につながるから止めたほうがよい」といった、ネガティブな意見もあります。かつては一見筋が通っているように思えた保守的な議論ですが、今の若い世代にはそのような概念が薄まってきているようです。

 

「難しい仕事にチャレンジしたけれど結果が出ずに給与が下がるケースはどうするのか?」というような疑問も聞かれることがあります。細かく見れば矛盾も抱えているかもしれませんが、それは仕方のないことです。

 

例えば、業種が限られますが、管理や監督、マネジメントの負荷を背負わない見返りとして、数字を出した人に高いインセンティブが支給される仕組みも存在します。可能な企業では、ゼネラリストコースとスペシャリストコースを共存させ、評価制度を運用する戦略を導入する企業も増えてきています。

 

信賞必罰を伴った評価制度の設計と運用は、必然的に人の雇用の流動性を高めることにつながります。雇用流動性が高まることにより、人不足の問題は自動的に解決します。

 

一方で、それに対応できなかった企業は淘汰されることになります。しかし、日本の総人口が減少する中で、ムダ・ムリ・ムラが省かれ、残るべき企業が残り、求職者が勤めたいと思う会社に応募が集まるという、非常に合理的な環境が自動的に整います。多少政治の世界での調整やケアが行われることはありますが、大きな流れは変わらないでしょう。