小学校受験に向いている家庭、向いていない家庭
――そのうえで、一言でまとめることは難しいとは思うのですが、小学校受験に向いている家庭と向いていない家庭について教えてください。
狼侍:小学校6年間をどう過ごすかにフォーカスできるかどうかが、大きなポイントだと思います。偏差値や中学以降の進路ばかりを気にしていると、小学校6年間の教育が置き去りになってしまいます。この時期は人格形成において非常に重要な時期です。
その6年間をどのように過ごさせたいかという視点を持っていることが、小学校受験に向いている家庭の特徴だと思います。
そういう意味で、大学進学や中学以降の偏差値だけを気にしていると、小学校の教育とは目線が合わなくなってしまいます。特に初等教育では、6年間の時間を子供にどう与えるかを考えられる親御さんでないと、私立小学校の本来の魅力は伝わりにくいかもしれません。
一方で、初等教育の6年間が重要だといっても、小学校受験の段階では、将来的に中学受験をするのか、高校受験をするのか、さらには大学受験まで見据えて方向性をある程度仮説として立てる必要があります。
つまり、かなり先を見据えた判断が求められるわけです。中学受験を目指すなら、やはり偏差値や大学進学実績といったものに注目することになりますよね。そのため、長期的な視点を持ち、12年あるいは16年というスパンで子供の教育を考えることが必要になります。
こうした視点を持っていないと、私立小学校の本当の魅力にはなかなか気づけないかもしれません。特に今の都心部では、中学受験が当たり前という風潮があり、「5年生から始めたら遅い」といわれ、3年生や4年生から受験準備を始める家庭も多いです。
そうした状況のなかで、多くの家庭が最初に見るのは偏差値などの数値的なものです。ですが、本来、初等教育はそういった数字では測れない部分が大切です。
小学校受験においては、各学校が持つ「個性」や「教育方針」を重視する必要があります。初等教育の段階では偏差値はなく、子供の可能性やその学校の教育方針を中心に考えるべきです。長期的な視野を持って、その学校で過ごす6年間をどのように考えるかがポイントになります。
――小学校受験と中学校受験はまったくの別物なのですね。
狼侍:結局のところ、小学校受験では「偏差値を忘れられるかどうか」が鍵になります。これについては、偏差値が頭の片隅でチラついてしまう、どうしても気になってしまうという親御さんにとっては、小学校受験は難しいといえるでしょう。
また、たとえば「早慶に入れなかったから、中学受験でリベンジする」というような考え方を持っている場合、そもそも小学校受験には向いていないかもしれません。そういった“リベンジ精神”が前提になっていると、小学校の教育環境や方針を本当に理解するのが難しくなってしまいます。
小学校受験は単なる中学受験へのステップではなく、初等教育としての本質を見据えた判断が必要です。
