(写真はイメージです/PIXTA)

大統領による「非常戒厳」宣言で、世間を驚かせた韓国。2025年は、最低賃金の引き上げや育休への支援など、労働関連政策が大きく拡大・改善される年になりそうだ。本稿では、ニッセイ基礎研究所の金明中氏が、2025年より大きく変わる韓国の労働関連政策のポイントについて、詳しく解説します。

育児期労働時間短縮制度の対象を拡大

2025年から育児期労働時間短縮制度も改正される。

 

まず、子どもの年齢基準が従来の8歳以下または小学校2年生以下から12歳以下または小学校6年生以下に拡大される。これにより、小学校高学年の子どもを持つ親も労働時間短縮を申請することができるようになった。

 

また、労働時間短縮の使用期間が従来の最大2年から最大3年に延長され、育児休暇を使用しなかった期間まで含めてより長く活用できるように調整された。これとともに、労働時間短縮申請の最小単位が従来の3ヵ月単位から1ヵ月単位に変更され、労働者がより柔軟に制度を活用できるようになった。

 

これにより、労働者は育児に必要な時間をより柔軟かつ効果的に確保することができると期待される。

事業主に対する制度も改正

事業主に対する制度も改正された。

 

まず、2025年から事業主のための代替人材助成金が拡大される。従来は事業主が直接雇用した代替人材に対してのみ支給されていた助成金が、派遣労働者にも拡大された。また、産前産後休業、育児中の短時間勤務に対して月80万ウォン支給されていた助成金が、産前産後休業、育児中の短時間勤務、育児休業を使用する労働者まで対象が広がり、助成金の金額も月最大120万ウォンに引き上げられた。

 

一方、2025年から賃金不払い根絶のための労働基準法が改正される。常習的に賃金を滞納した事業主は、その事実が信用情報機関に提供され、融資審査や金融取引で不利益を受けることになる。また、このような事業主は、政府の補助金や助成金の申請が制限され、公共機関の入札に参加する際、減点や参加制限などの不利益を受ける可能性がある。さらに、常習的に賃金を滞納し、名簿が公開された事業主に対しては、雇用労働部が法務大臣に出国禁止を要請できるようになった。

 

また、従来は退職者にのみ適用されていた未払い賃金に対する遅延利息(年利20%)が在職中の労働者にも適用されるようになり、常習的な給料滞納によって発生した被害に対しては、最大3倍の損害賠償を請求できるように改正された。

 

そして、小規模事業場の労働者の権益保護を強化するため、現在、5人未満の事業場に適用されていない、残業時間を含めた1週間の労働時間を52時間までに制限する「週52時間勤務制」や時間外・休日及び深夜の割増賃金、年次休暇等に関する規定が2025年から段階的に適用される見通しだ。

 

2025年から実施される労働関連政策によって、韓国の労働者の労働環境が改善され、ワーク・ライフ・バランスの実現や幸福度の向上に少しでも寄与することを期待したい。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年1月10日に公開したレポートを転載したものです。

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