トランプ流交渉術から学ぶこと
さて、この「勝負に勝つためには『事柄』の正しさを追求するのではなく、その事柄に関わる『人』にまつわる利害得失を広く捉えて交渉するべき」というトランプも実践するロイ・コーンの教えは意味のあるものかを考えてみたいと思います。
映画のなかでの、時には強引さを通り越して横暴とも言えるトランプの振る舞いはひとまず置いておいて、この教えは、普通のビジネスパーソンでも大いに役立つでしょう。
たとえば、あなたがシステム会社の営業担当としましょう。営業先においてそのシステムのよさをいうことだけが営業ではないことは当然です。たとえば、真の意思決定者が誰かを見極めること、その意思決定者の決裁権限の上限額がいくらまでか、いつ予算は策定されるのかなどを知ることが必要です。
さらに、その意思決定者の思考のクセや社内力学での立ち位置を知ることができればベターでしょう。そのうえでその意思決定者の利害得失にあったオファーするのです。
日本では、ソフトバンクの孫社長がトランプ並にこのような交渉術に長けています。私は孫社長の秘書をしていたので身近で見ていたのですが、孫社長の提案は、常に「この条件ならこの人受けないわけないよな」と思う内容なのです。
たとえば、アメリカ企業とのジョイントベンチャーを迅速に立ち上げるためにあるスタートアップを買収したことがあります。当時、渋谷の道元坂の裏手にあった古い戸建てにあったスタートアップに孫社長自身が押しかけて、トップと直談判をしてその場で、その事業を1億円現金で買収すること決めたことがあります。
そのスタートアップは事業立ち上げ直後で存続・成長するために現金が必要だったのです。ちなみにその企業はその1億円を元手に多くの事業を起こし、そのなかには現在誰もが知っているSNS系の上場会社に成長した会社もあります。お互いにwinwinの、よい交渉だったと言えると思います。
実は、この教えはトランプが大統領再任目前の現在、我が国の政治やビジネスの中枢にいる人にとっても重要だと思います。たとえば、まだトランプ大統領と会談できていない石破首相や日本製鉄のトップにとってトランプを理解することは極めて重要なはずです。
交渉相手となる「人」であるトランプの利害得失を考えること必要です。「事柄」の正しさを議論することはあまり意味がないでしょう。
そういう意味でも、映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、その一挙手一投足が世界中から注目を集めるトランプを理解するうえで必見の映画です。
映画はTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開中。
三木 雄信
元日本年金機構 理事
トライズ株式会社 代表取締役社長
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