「play the man, not a ball.」ロイ・コーンの最も重要な教え
トランプはロイ・コーンから多くのを学んだとされています。そのなかで私が、トランプにとって最も重要な教えだったろうと感じたことは、「play the man, not a ball.」という教えです。
この教えは、日本語で言えば、「ボールを追うな、人を追え」ということです。つまり「勝負に勝つためには『事柄』の正しさを追求するのではなく、その事柄に関わる『人』にまつわる利害得失を広く捉えて交渉するべき」ということです。
実際にロイ・コーンやトランプがこの発言をしたかをさまざまな資料にあたって確認しましたが、残念ながら確認することができていません。しかし、この教えは、トランプの交渉術の本質をついて象徴していると思います。
たとえば、映画中では、ロイ・コーンはトランプが抱えている政府との裁判を政府の責任者の個人的ことをつかみ、和解で幕引きをさせています。
また、トランプは大規模な不動産開発を次々と行っていくのですが、不動産取引は一件の取引ごとに違います。工場で製造された規格製品の売買のビジネスとはまったく異なり、さまざまな関係者の資金の見込みやどこまでのリスクが取れるかなどの個々の利害得失に基づいた交渉の結果のオーダーメイドの取引なのです。
この不動産取引の特性がトランプの交渉スタイルの大きく影響していることも描かれています。
さらに、最近のトランプの大統領選でのキャンペーンを見ても、「おいぼれバイデン」といった発言のとおり、対立候補の政策よりも対立候補個人に対してのコメントが目立ちました。まさしく「play the man, not a ball.」をトランプは実行しているのです。
