年金暮らしに厳しい、じわじわと出ていく「孫費用」
年末年始はさらに過酷な状態に。真紀子さん一家はもちろん松尾さんの家に集合。さらに、遠方で暮らす長男一家も訪れ、大騒ぎに。にぎやかで寂しくないといえばそうですが、疲労も一層強くなりました。
松尾さんは孫たちの遊び相手、妻の和美さんは料理と片付け。とてもゆっくりとしたお正月とはいえませんでした。
肉体的にはもちろん、金銭的な面での負担も少なくありません。夫婦の年金は月19万円ほど。家計に余裕があるとはいえない中から孫たちの食費を出し、欲しがるものがあれば買ってあげてと、ちょっとした積み重ねがじわじわと松尾さんたちを苦しめました。しかし、娘に請求するのも親としてためらいがあります。
「孫がかわいいことに変わりはないけど、さすがにここまでは面倒見られない。こんな生活がいつまで続くのか……」
そう切実に考えるようになりましたが、忙しく働く娘夫婦を見ると突き放すこともできず、頭を抱えています。
子や孫とのつきあいに求められる適切な距離感
このケースのように、子や孫のサポートに頭を悩ませるシニアは少なくないといいます。家族だから困っていれば助けてあげるのは当然と考えるかもしれませんが、行き過ぎれば自分たちの健康や家計が破綻してしまう可能性もあります。
ソニー生命「シニアの生活意識調査2024」によれば、「この1年で孫のために使った金額」として以下の結果が出ており、平均は年間10万4,717円となっています。
この1年間で孫に使った金額
・1万円未満:5.7%
・1万円~2万円未満:10.5%
・2万円~3万円未満:13.0%
・3万円~5万円未満:15.8%
・5万円~10万円未満:27.5%
・10万円~20万円未満:17.4%
・20万円~30万円未満:4.4%
・30万円~40万円未満:1.2%
・40万円~50万円未満:2.4%
・50万円以上:2.0%
この金額をどう考えるかは人によってまちまちでしょう。ですが、年金暮らし世帯にとって、年間10万円超の出費は決して少ないとはいえないのではないでしょうか。これが10年続けば、100万円以上の負担になる計算です。
また、内閣府による令和2年度「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によれば、高齢者が望む子どもや孫とのつきあい方について、以下のような結果が出ています。
子どもや孫とのつきあい方
・子どもや孫とは、いつも一緒に生活できるのがよい 18.8%
・子どもや孫とは、ときどき会って食事や会話をするのがよい 56.8%
・子どもや孫とは、たまに会話をする程度でよい 10.4%
・子どもや孫とは、全くつき合わずに生活するのがよい 0.7%
・わからない 8.8%
・無回答 4.5%
上記の通り、もっとも多い割合を占めるのが「ときどき会って食事や会話をするのがよい」という選択肢。
「いつも一緒に」という回答も少なくないため、もちろん人それぞれ意見は違いますが、自分にとって適切で無理のない距離感が必要ということでしょう。
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