今回は、カスタマイズしすぎのリフォーム物件が売れないワケを見ていきます。※本連載は、経済評論家として各媒体で活躍する上念司氏の著書、『家なんて200%買ってはいけない!』(きこ書房)の中から一部を抜粋し、著者自らの体験談を交えた「間違いだらけの家選び」について紹介します。

まるで忍者屋敷!? 転売価値はほぼゼロ

リフォームといえば、誰もが一度は見聞きしたことがあるだろう「あのテレビ番組」がありますね。先日も、地盤改良をともなう古民家再生の難工事がたった2000万円でできるわけがないだろうとツッコミを入れながら見てしまいました。毎回ツッコミどころ満載ですが、信じる人がいるから放送が続いているのでしょう。

 

もちろん、読者の皆さんはこの番組のリフォームの問題点についてすでにお気づきでしょう。一言でいえば「カスタマイズしすぎ!!」に尽きます。

 

あの番組の物件はカスタマイズの度が過ぎていて、毎回、忍者屋敷みたいな物件ができています。日光江戸村(※)も真っ青です。しかも、備え付け家具がことごとくキャスター付き!将来のメンテナンスの手間など、まったく考えないに違いありません。

 

(※)栃木県日光市にある、江戸時代をモチーフにしたテーマパーク。忍者怪怪亭などさまざまな趣向を凝らした施設があり、派手ではないが口コミでの評価は高い。

 

それに、ビフォーの時は暗めの露出で雑然とした感じの絵を撮り、アフターでの撮影は光をバシバシ当てて、明るく演出します。引っ越し前で家財も少なめですから、印象がぜんぜん違うのは当たり前です。

 

そもそも、あんな美しいディスプレイのまま暮らせるわけがありません! お前の家はモデルルームかと、1万時間ほど説教してやろうかと思いました。

 

建てた人が住み潰す家を理想に掲げると必ずああなります。しかし、転売価値、流通価値で考えたらどうでしょうか。いくらテレビに感化されたといっても、本当にああいった物件を買う人は少数派だと思います。コーポラティブハウスの転売価値がほぼゼロなのと同じです。

 

しかも、あの番組に取り上げられる家は、だいたい住宅街のど真ん中にある狭小地というパターンが多いです。駅からどのくらい距離があるのかはわかりませんが、あまり魅力的な立地にあるわけではないのでしょう。

 

やっぱりこれでは市場に負けます。日本の中古住宅市場ははっきりいってクソです。素晴らしい設備や住空間などの評価はゼロ。床暖房も浴室乾燥も価値はありません。しかし、それでも市場の判断には従わざるを得ません。市場で価値がつかない家は、家の方が絶対に悪いのです。

オシャレな「イメージ戦略」に惑わされない

私が不思議なのは、どうして転売価値が上がるリフォームをやらないのか、ということです。テレビ番組としてはストーリーを作りにくいのはわかります。備え付け家具は最小限、設備はほとんど量販店の家電ですから絵的にもパッとしないでしょう。

 

しかし、家を借りたり買ったりする人からすれば、量販店の家電の方がいつも最新型をそろえられて便利ですし、備え付けよりも自分の好きな家具を置いた方が暮らしやすいはず。やはり、家というのは究極的には箱(空間)であるという認識が不足しているのではないでしょうか。

 

もちろん、あれはあくまでテレビ番組ですから、番組としての都合が優先されていて当然です。しかし、世の中にはそういう大人の事情を察することができない人もいます。エンターテイメントと家づくりは根本的に違います。

 

この点は住宅雑誌全般にもいえます。雑誌でもやたらとオシャレなインテリア写真が掲載されていますが、あれもテレビ番組と同じく、実用性を無視して読者にイメージを膨らませ、高いものを買わせるテクニックに過ぎません。これらは悪魔の誘惑ですね。うかつにもこんな話を信じたら地獄に堕ちますよ。

 

<まとめ>

過剰なカスタマイズは価値を下げる! テレビや広告など、イメージに踊らされてはいけない。

家なんて200%買ってはいけない!

家なんて200%買ってはいけない!

上念 司

きこ書房

「空き家率は将来、40%になる」 「今後は誰もがタダで家を手に入れられる」 「家賃のほうが、ローンの支払額より安い」 舌鋒鋭い経済評論家、上念司が自らの体験談を交え、初めて語るマイホーム本! 人口減少、少子高齢…

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