お年玉では済まされないカネの無心にやってくる息子たち
Sさん夫婦は、自分たちの老後資金を息子たちのために、孫の学費の一部を負担することにしました。多少余裕があるから大丈夫だろうと決心したことでしたが、実はそれだけでは済まされなかったのです。孫の学費援助は始まりに過ぎませんでした。
孫は4人。仮に毎年、学費の半分を援助すると4年制大学の教育費だけでも約1,000万円がかかります。一昨年は年始早々から「孫たちへのお年玉を」と多めに請求されました。昨年に至ってはあからさまにカネの無心に訪れてきたのです。しばらくは都度、援助をしましたが、両親に資産があることを知った息子たちは、さらに生活費の援助までせがむように……。
老後2,000万円問題がマスコミ等で騒がれたように、自分たちの老後資金はこのままでは2,000万円を割ってしまいます。想いを伝えたのは間違いだったのだろうかと、年始早々カネの無心にやってくる息子たちに疲弊するSさん夫婦。また、最近になってどちらのほうが多くもらっているなどと息子の嫁同士がもめていることを知りました。
仕舞いには「こんなことなら老後資金なんて貯めなければ……」と後悔するほどに。しかし、資金が枯渇すればない袖は振れないため、カネを無心にくることもなくなるだろうと、苦笑します。そもそも振る袖すらないほうがよかったのかもしれないと思いました。
想いを伝えても想定外な方向に進むことも
Sさん夫婦は、自分たちの資産や想いを伝えることで、息子たちの争いを防げると思っていました。しかしながら、今回はそうではなかったようです。
Sさん夫婦はどうすればよかったのでしょうか。一般的には終活を機に想いを伝えることで、家族はその人の想いを尊重するでしょう。ただ、日々の生活のなかで困窮していると、想いをわかっていながらも、自らの生活を優先しがちです。無心にやってくるのであれば、もう一度きちんと向き合ってみてはいかがでしょうか。
〈参考〉
令和6年度の年金額改定についてお知らせします
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
https://www.jili.or.jp/research/chousa/8944.html
国税庁:No.4405 贈与税がかからない場合
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表
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