本格的な海外投資を実践する場として、近年では「シンガポール」がその存在感を増しています。なぜ今シンガポールなのか、基本的なところから見ていきます。

東南アジアという観点で見れば「ど真ん中」に位置

本格的な海外投資といえば、これまではやはり「香港」が圧倒的にメジャーな存在でしたが、近年では、同じアジアの都市である「シンガポール」の存在感も大きく増しています。今回は、なぜシンガポールなのか、こちらも基本的なところをご紹介しましょう。

 

正式名称はシンガポール共和国といいますが、国土は非常に狭く、東京23区と同じくらいの広さです。人口は約500万人で、まさに都市国家といえるでしょう。

 

アジア交通の要所にある、という点は香港と同じです。古くから貿易の中継地として栄えてきましたが、こちらも香港と同様に、貿易都市・金融都市として国を富ませる道を選び、実際に香港と比肩するポジションを獲得しています。

 

日本からは飛行機で約7~8時間。香港の場合は4~5時間ということを考えると、この点やや見劣りがしますが、シンガポールにはそれを補うメリットが数多くあるのも事実です。

 

 

香港にはない、もっとも大きなメリットといえば、それはやはり独立国であるということでしょう。香港はあくまでも中国の特別行政区です。2047年までは現在の「一国二制度」が維持されることになっているとはいえ、少しずつ「中国化」が進んでいるという見方もあり、また中国国内には「香港的な役割」を担いつつある都市が次々と育ってきているのも確かで、現在のような唯一無二のポジションがいつまで保てるかは定かではありません。

 

さらに、今後の成長余力という点では、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、カンボジアといった東南アジア各国のほうが有望と捉えることもでき、地の利という面から見ても、東南アジアのど真ん中に位置するシンガポールの優位性は高くなる一方といえます。

香港・シンガポール双方の長所を利用する手もあり

前回、香港に国際的にもトップクラスの金融商品が集う理由として、「世界中からヒト・モノ・カネが集まってくるから」という説明をしましたが、これはシンガポールもまったく同じ状況になっています。金融都市としての実力・存在感については、すでに甲乙がつけ難く、ある発表では香港が上、また違う発表ではシンガポールが上という状態が続いているのです。

 

もちろん、税制や法律などについては様々な差異があり、各個人のライフプラン、投資の目的、資産状況、根本的な嗜好などによっても、香港とシンガポールには「一長一短」があるといえます。ただ、本格的な海外投資を考えるにあたっては、これまでの一般的なパターンのように香港一辺倒で考えるのではなく、できれば香港とシンガポールの両地に足を運び、どちらが自分に合っているのかを十分に吟味する時代が訪れているといえそうです。

 

当然、人によってはどちらかではなく、両方活用したほうがよい場合もあるでしょう。実際、(資産規模にもよりますが)香港とシンガポールそれぞれの長所を上手に抽出して利用すれば、どちらか一方だけを使うよりも柔軟で効率的な資産運用を行うことも可能となります。

 

最後に注意点をひとつ。シンガポールについても香港と同様、国際的にはタックスヘイブン(租税回避地)として認識されていますが、この要素に飛びつくのは得策ではありません。香港を利用する場合と同じく、税務面できちんと相談できる専門家の存在が不可欠といえるでしょう。

 

 

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