(※写真はイメージです/PIXTA)

60歳を過ぎてからも働くつもりだけど、退職後は少しだけ休んで、その後で再就職したいといった人もいるでしょう。本稿では金﨑定男氏とAIC税理士法人による著書『会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集し、事例と共に詳しく解説します。

理由1

体力もまだまだあり若いつもりでも、60歳を過ぎると再就職にはそれなりのハードルがあります。したがって、のんびりしている間に年齢は増えていき、就職は年々難しくなっていきます。

 

したがって、B社から声がかかっている間に、早めにB社に入るというのも一つの考え方です。B社はこれまで勤めていた会社の取引先でもあり、Iさんの力量もわかったうえでお誘いが来ているのであり、就職後のミスマッチ、すなわち、会社側にとっても、Iさんにとっても、「こんなはずではなかった」といった状況が生じにくいと考えられます。

 

数か月のんびり考えている間に、B社のほうでも事情が変わり、就職が難しくなる可能性もありますので、声がかかったときがよいチャンスととらえるのも一つの考え方です。

理由2

給付金の金銭面から見てみましょう。

 

①最大限の失業給付を受けた場合

Iさんは、失業給付を受けた場合には、最大150日(5か月分)の失業給付を受けることができます。1か月約20万円の失業給付となるため、最大で約100万円を受け取ることができます。なお、失業給付は非課税であり、所得税・住民税はかかりません。また、当然のことですが、失業手当を受給している期間は、給与収入はゼロです。

 

②1か月失業給付を受けてB社に就職した場合

1か月の失業給付を受けたのちに、B社に就職した場合には120日分の失業手当が未支給の状態で残っているため、Iさんは、高年齢再就職給付金の受給権があると思われます。

 

また、60歳直前の給与と比較して、B社での給与の下落率は40%ですから、Iさんは月額30万円×15%=45,000円の高年齢再就職給付金を、最大1年間にわたり受け取ることができます。

 

1年分もらったと仮定すると54万円となります。よってこのケースでは、もらった給付金の合計は失業手当20万円と高年齢再就職給付金54万円の合計である74万円を受け取ることになります。

 

合計の給付金は74万円となり、①の場合の100万円よりも少なくなりますが、②の場合には①に比べて4か月早く働き始めますから、給与所得(月額30万円)も考慮すると30万円×4か月=120万円を稼いでいることになるため、トータル現金収入としては①よりも②のほうが多くなります。

 

なお、高年齢再就職給付金は非課税扱いであり、所得税・住民税等は課税されません。

 

③失業給付を受けずにB社に就職した場合

失業手当を申請せず、すぐにB社に就職した場合には、Iさんは、高年齢雇用継続基本給付金を受けることができます。この給付金は、月額4万5,000円の給付を通常の給与とは別に最大5年間にわたり受け取ることができます。

 

5年間60か月の給付金総額は、最大で4万5,000円×60か月=270万円となります。通常の給与に加えてこの金額が支給されるため、①、②のケースと比べても有利であることがわかります。

 

なお、仮にIさんが失業手当の申請をせずに単に2、3か月ゆっくり期間をおいて、B社に就職した場合であっても、受給開始のタイミングは遅れますが、高年齢雇用継続基本給付金は支給されます。

 

高年齢雇用継続基本給付金も非課税であり、所得税・住民税は課税されません。以上のことから、60歳を超えた方で、失業手当をとりあえず申請しようと考えていても、近い将来給与減額した状態で再就職できる見込みがあるときは、今回のIさんのように失業手当を申請しないほうが有利になることがあるため注意が必要です。

 

なお、2025年4月以降、雇用保険法の改正により、改正適用対象となる人の高年齢雇用継続給付の金額が縮小されます。

 

 

金﨑 定男

AIC株式会社・AIC税理士法人・AIC社会保険労務士法人

統括代表

 

 

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※本連載は金﨑定男氏とAIC税理士法人による著書『会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋・再編集したものです。

会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本

会社が教えてくれないサラリーマンの税金の基本

金﨑 定男・AIC税理士法人

日本能率協会マネジメントセンター

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