経済的に安泰であれば離婚しないという神話はない
持ち家、退職金3,000万円、貯蓄3,000万円、年金330万円(夫婦)と、経済的に安泰であれば妻は離婚を切り出さすことはしないだろうと思い込んでいると大誤算となります。
Aさんの定年退職を機に、妻から離婚を切り出されたのです。内閣府の男女共同参画白書 令和4年版より夫婦関係が破綻した理由では、性格の不一致が男女とも最も多く、女性では続いて、精神的な暴力、異性関係、浪費となっています※1。Aさん夫婦でいえば、性格不一致、浪費、家庭を顧みないなどが該当しそうです。
ただ、Aさん夫婦はお互い両親を早くに亡くしており、お互い頼るところがないことから、たとえ冷めた家庭であっても大人しい妻とは老後もそれなりに暮らすだろう、いまどき流行りの卒婚や熟年離婚なんてないだろうとAさんは確信していたのです。
ある日1通の封筒が…
常務に昇進し、退職金の目処がついたことを妻に告げてから数日後、見慣れぬ封書が届きます。「おい、なんか届いているぞ」日ごろ郵便物を管理している妻に問いかけますが、返事がありません。「さっきまで家にいたと思ったんだが、出かけたのかな」封書はAさん宛だったため、自室で中を開けてみると、衝撃の内容が。離婚に向けた調停を行うため、家庭裁判所からの呼び出しによるものでした。「まさか、大人しい妻が、調停なんか……」と愕然とします。
その後、話し合いを重ねましたが、妻の意思は変わらず、2年後に離婚を承諾します。Aさんが浪費家であることを懸念し、生前贈与として子ども2人には現金を渡します。離婚する妻とは家と年金は分割をするため、按分割合は50%となります。
厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、同居期間別にみた離婚の年次推移から、同居期間が「20年以上」の割合は上昇傾向にあり、2020年には21.5%となっています。同居期間が長いということは、熟年で離婚する人が多いと考えられます※2。
結果、Aさんには現金1,500万円と年金が月額約16万円となり、家を失い、安泰の老後どころではなくなります。