「空虚な気持ち」の正体
思い出すのは、大変だった時期のこと
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退屈な毎日を過ごしていると、思い返すのは副業を頑張っていた、退屈とは無縁な、あのときのことだった。
この会社から抜け出したい。労働というものから抜け出したい。
その一心で、僕はWebサイト(ブログ)を運営してきた。うまくいくためにあらゆる方法を模索し、実際に試し、自分自身に最適化し、寝る間も惜しんで記事を書いた。効率化を続け、ライターも雇って、月に数百万円を稼ぐようなメディアを作り上げたのだ。
ブログからはじめて収益が生まれたとき、僕は心の底から嬉しくて、狭い部屋で雄叫びをあげたのを覚えている。それは数百円の報酬で、ちょっと残業でもすれば稼げてしまうようなものだけれど、自分の力でいちから稼いだという充実感がすごかったし、これから成長していくんだろう、という期待がそこにはあった。
ブログの収益が伸びて、1日数千円稼げるようになったときも、本当にワクワクした。もしかして、これで暮らしていけるんじゃないかと興奮して、よりこの副業にのめり込んでいった。
外注戦略を実行しているときも、今思えば心が躍っていた。作戦を考えて、こんなふうにやれば、自分の時間を削減しながら、しっかり報酬の上がる記事を作ることができると。もちろん、はじめは赤字だった。でも、改善を重ねて、外注の皆との関係を構築し、うまく回る仕組みができたとき、僕はとてつもない万能感に包まれた。
もちろん、楽しいことばかりではなかった。会社員をしながらのサイト運営は、体力的にも大変だったし、成果が出るまでの、暗闇を走ってるような感覚はキツかった。アルゴリズムの変更で売上が大幅に減ったときは精神的に大ダメージを受けたし、仲のいいブロガーが自分の戦略を丸パクリしていたときはすごく嫌な気持ちになった。
「会社を辞めたい! 仕事をしたくない!」そんなふうに思いながら、誰よりも仕事をしていた数年間だった。そして、実際に会社を辞めて、仕事をしなくてもよくなった今、あのときのことを恋しく思ってしまうのは、なぜだろうか。
もう一度、ゼロからサイトを作ったりするのもいいかもしれないな。そんな考えが、頭をよぎった。少なからず胸が高鳴っている自分がいた。今の体験を元に、そのままサイトにしたら、それなりに面白いんじゃないだろうか? そのコンセプトなら売却先の競業避止(ひし)義務にも引っかからないし、外注のノウハウだってある。結構うまくいくかもしれない。
けれどすぐに、「せっかくFIREしてるのに、なんでまた働こうとしてるんだろう」と思い直した。うまくいくとして、それが何だと言うのか。もう、目標は達成できているのに。
今の生活は、確かに僕が思い描いていた理想的なものだった。
そのはずなのに、なぜか毎日気が晴れず、大変だったはずの「途中の」日々に思いを馳せている。この空虚な気持ちは、どうすれば解消されるのか。騙し騙しでやっていくしかないのか。それとも、じっくりと一度向き合うべきなのか。
答えは出ないまま、今日も1日が過ぎ去っていった。
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