サラリーマンであればいつかは迎える「定年退職」。長年、頑張ってきた自分はもちろん、サラリーマンを支えてきた家族にとっても喜ばしい日に違いありません。そんな日が修羅場になったという人もチラホラ、いるようです。
「月収64万円」「退職金2,300万円」大手メーカーで定年を迎える〈60歳父〉を仲良し家族が祝福。ビールで乾杯も一転、妻が大号泣の大修羅場「何かの間違いでは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を祝う場で露呈した「夫婦のすれ違い」

大学卒業後に就職した大手メーカーを定年退職する岡田誠さん(仮名・60歳)の場合、退職金額は2,300万円。直前の月収は64万円で、月収換算は36倍。「まわりと比べても普通ですよ」と謙遜するとおり、大手企業を勤め上げたサラリーマンのなかでは一般的な退職金を手にしています。

 

定年後はどうするのか? といえば、出向の話もあったといいますが断ったといいます。「30年以上勤めているので、もう完全燃焼です」というのが理由。退職日には同僚たちに盛大に見送られ、家では家族全員で定年を祝ってもらったとか。しかし、その際の大惨事を振り返り「大失敗でした」と、改めて反省。

 

それは、妻のほか3人の子どもたちもわざわざ集まってくれた祝いの場。テーブルには妻が頑張ったのでしょう、いつもよりも豪華な食事が並び、長男がわざわざ買ってきてくれたシャンパンで、おしゃれに乾杯をしたあとでした。料理に舌鼓を打ちながら、これまでのサラリーマン人生の思い出話に花を咲かせていると、ふと長女から「明日からどう過ごすの? 何かやりたいことは?」と質問に対し、妻が「どこか海外にでも旅行に行っていたけど、どこに行こうか?」と回答。妻と娘できゃっきゃきゃっきゃと盛り上げったといいます。

 

そこで岡田さん、「はて、海外旅行をするなんていう話していたか……」と首を傾げます。そんな様子に妻と長女は「どうしたの、お父さん?」。

 

――海外旅行っていう話、いつした?

――退職金が入ったら、と話していたでしょ

 

確かにずいぶん前にそんな話をしたことがあり、旅行会社の近くを通った際にもたくさんのパンフレットを持って帰ったこともありました。しかしそれは定年退職を決めた1年ほど前のこと。このときの会話が生きているとは……。

 

――でも、退職金の使い道は決まっているし

――えっ⁉

――銀行に「退職金特別プラン」というポスターがあって、この前、話を聞いてきたんだよ

 

その金融機関でおすすめしたのは、「定期預金と組み合わせて金融商品を購入して退職金を運用しましょうよ」というもの。定期預金も金利が優遇されていて、すごくお得だったといいます。年金を受け取るようになる65歳まで5年。お金の心配はしていないけど、すこしでもお金が増えるにこしたことはない……口約束の段階ですが、銀行の営業担当にも、「退職金が入ったらよろしく」と伝えてあるそう。

 

――なんでそんなこと勝手に決めちゃうの!

――(えっ、なんで責められているんだ?)すごく金利も良かったし

――そういうことじゃなく、なんで相談をしないのかってこと

 

岡田さん、どこか退職金は自分のお金という意識があり、特にその使い道等、相談をしていなかったそう。妻にとっては、これまで夫を、そして家族を必死で支えてきたという自負があります。それなのに「退職金は俺のお金、どう使おうと、俺の自由」というような態度が許せなかったようです。

 

――私のこれまでの30年は何だったのよぉ! もう別れる、あなたとは別れる!

――(えっ、突然の別れ話。何かの間違いでは…)

 

お酒のせいもあって妻は大号泣し、せっかくの祝いの場は大荒れ。「まさか、あんなに怒るなんて思ってもいませんでした」と、退職金の運用について何も相談なく話を進めようとしたことを、深く反省したといいます。