「失われた30年」―日本人の心理的変化と驚くべき国際比較
1990年代初頭のバブル崩壊から30年以上が経過しましたが、日本経済は未だに本格的な回復を果たせていません。この長期停滞の根底には、日本人特有の心理的要因があると考えられます。
特筆すべきは、日本人の仕事へのモチベーションと自己肯定感の低さです。国際比較調査によると、日本は先進国の中でも際立って低い数値を示しています。特に衝撃的なのは、アメリカのギャラップ社による国際調査結果(2023年)です。この調査によると、日本人で「仕事に熱心に取り組んでいる」と答えた社員はわずか6%に過ぎませんでした。
これは調査対象となった約140の国のうち、最低レベルという驚くべき結果です。世界平均の23%と比較しても、日本人の仕事へのモチベーションの低さが際立っています。この数字は、日本の労働生産性の低さとも一致します。OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本の労働生産性は加盟国中で下位に位置しており、G7諸国の中では最下位です。
また、自己肯定感についても同様の傾向が見られます。内閣府の調査によると、「自分に満足している」と答えた日本の若者の割合は45.1%で、アメリカ(87.0%)、イギリス(80.1%)、フランス(85.8%)などと比較して著しく低い数値となっています。
一方で、この30年間で経済成長を遂げた国々、例えば韓国や中国、そして一時的な停滞から回復したアメリカなどでは、仕事へのモチベーションや自己肯定感が比較的高いことが各種調査で示されています。
例えば、同じギャラップ社の調査では、アメリカの「仕事に熱心」な社員の割合は33%、中国では19%、韓国では13%と、日本の6%を大きく上回っています。これらの国々では、チャレンジ精神や自己実現への意欲が高く、それが新たな産業やイノベーションを生み出す原動力となっています。
韓国のIT産業や中国のテクノロジー企業の台頭、アメリカのシリコンバレーにおける継続的なイノベーションなどは、その現れと言えるでしょう。日本がバブル崩壊から真の意味で立ち直れていない大きな要因は、こうした仕事へのモチベーションと自己肯定感の低さにあると考えられます。
「どうせうまくいかない」「自分には無理だ」という思考パターンが、個人レベルでの成長を妨げ、それが集積して社会全体の停滞につながっているのです。この状況を打破するためには、個人レベルでの意識改革が不可欠です。
自己肯定感を高め、失敗することを恐れず、前向きな姿勢で挑戦することの価値を再認識する必要があります。それは単に個人の幸福のためだけでなく、日本経済全体の活性化にもつながるのです。
メンタルブロック(私たちの心の中に無意識のうちに形成される目に見えない障壁)を解消することは、まさにこの課題に対する1つの解答となるでしょう。自分自身の価値を信じ、お金や成功に対する健全な関係性を築くことは、個人の豊かさだけでなく、日本社会全体の再生にも貢献する可能性を秘めています。
他国の成功例から学びつつ、日本固有の文化や価値観を活かしながら、新たな成長モデルを構築していくことが求められています。そのためにも、まずは個人レベルでの意識改革、特に自己肯定感の向上と仕事へのモチベーションの回復が重要となるのです。
三凛 さとし
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