2020年代に入って以降、最低賃金の上昇が顕著になり、改定されるたびに大きな話題を呼んでいます。たとえば、厚生労働省(地域別最低賃金に関するデータ(時間額))によると、20年前の2004年は710円でした。昨今、インフレが進む日本ですが、このことが示す真の意味とは……? 我妻佳祐氏の著書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』より、解説していきます。

「第1の矢」までは効果があったアベノミクス

また、デフレ経済では、働けなくなり一見、弱者に見える高齢者(それなりに貯蓄のある場合)にとっては、じつは年金も貯蓄も実質的に年々増えていく心地よい環境で、強者に見える元気な若者は、給料も上がらず、職も見つけられない厳しい環境にさらされるという、直感に反した逆転現象が起きていたのですが、政策はそう簡単には反転させられません。

 

それまでのインフレ経済にあわせて、若者には自力でがんばってもらい、高齢者に対しては福祉を充実させるという方向性(福祉国家)をいきなり逆にすることはできないので、デフレ経済では「世代間対立」が起きてしまいます。

 

もちろん政策を変更して理不尽な世代間格差を緩和することも必要ですが、適切なインフレ経済にすることで、これまでの「福祉国家」のスタイルが違和感なく続けていけるようにするほうが、どちらかといえば簡単なのではないでしょうか?

 

若者は独力で、高齢者は福祉で、というのは道徳的にもおさまりがよいので多くの人が納得しやすいのではないかと思います。

 

バブル崩壊以降、経済政策はデフレ脱却をずっと目標として掲げてきました。故・安倍晋三首相が提唱した経済政策、いわゆる「アベノミクス」も、2%のインフレを目標にしていました。一般的な生活感覚からすると、わざわざ物価上昇を目指すことには違和感があったかもしれません。でも、それ自体は、日本の経済成長を促す上で妥当なものだったと思います。2%程度のインフレで国民生活が揺らぐような経済では、高い成長率など実現できないでしょう。

 

アベノミクスは、金融緩和・財政出動・成長戦略という「3本の矢」を掲げていました。
この政策がもたらした効果についてはさまざまな評価がなされていますが、私自身は、「第1の矢 金融緩和」は成功したと思います。金融緩和とは、中央銀行(日本なら日本銀行)が金利を下げて、世の中に出回るお金の量(資金供給量)を増やすこと。こうすると、投資や消費などの経済活動が活発になりやすくなります。

 

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実際、安倍政権下では株価も上昇し、それによるデフレ脱却への筋道はつけられたのではないかと思います(なお、実際にインフレ転換への決定打になったのはロシアによるウクライナ侵攻でした)。

 

テーマから外れてしまうので詳しくは述べませんが、「第2の矢」の財政出動と、「第3の矢」である成長戦略については不十分であったとの評価も多いようです。
 

 

我妻佳祐

マネックスライフセトルメント代表取締役

 

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※ 本連載は、我妻佳祐氏の著書の『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・再編集したものです

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