(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●米相互関税の上乗せ税率の90日間停止は、4日にAEIが指摘した計算相違の修正である可能性。

●AEIの指摘に基づいて上乗せ税率を計算すると、ほとんどが10%となり公表税率を大幅に下回る。

●関税協議は基本税率と製品別税率が焦点か、米国にも影響する関税は引き下げ交渉余地あり。

米相互関税の上乗せ税率の90日間停止は、4日にAEIが指摘した計算相違の修正である可能性

4月2日にトランプ米政権から発表された相互関税は、一律10%の「基本税率」と、米国の貿易赤字額が大きい国・地域ごとの「上乗せ税率」で構成され、基本税率は4月5日、上乗せ税率は4月9日に、それぞれ発動されました。しかしながら、トランプ米大統領は4月9日、発動したばかりの上乗せ税率について、一部の国・地域に対し90日間の停止を許可することを明らかにしました。

 

相互関税の発表後、米主要株価指数は大幅に下落し、米ドルも対主要通貨で減価が進むなか、4月7日には米国債の急落も加わったことで「トリプル安」の様相となり、相互関税は軌道修正を余儀なくされたとの声も市場で聞かれました。ただ、米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」は、4月4日に米政権による税率の計算相違を指摘しており、上乗せ税率の90日間の停止は、計算相違修正のためである可能性も考えられます。

 

[図表1]米政権公表の上乗せ税率とAEIの計算による上乗せ税率

AEIの指摘に基づいて上乗せ税率を計算すると、ほとんどが10%となり公表税率を大幅に下回る

米通商代表部(USTR)が公表した上乗せ税率の計算式では、分子が「米国の貿易赤字額」で、分母は「2つの係数と米国の輸入額を掛け合わせたもの」となっています。2つの係数のうち、1つは関税に対する輸入価格の変動を表す「輸入価格の関税弾力性」で、USTRは0.25としました。もう1つは輸入価格に対する輸入需要の変動を表す「輸入需要の価格弾力性」で、これを4としました。

 

2つの係数を掛け合わせると1になるため、計算式は貿易赤字額を輸入額で割った形になり、USTRはこれを2で割ったものを上乗せ税率として公表しました。これに対しAEIは、USTRが用いたのは「輸入価格の関税弾力性」ではなく、「小売価格の関税弾力性」であるため、正しい数値は0.25ではなく0.945になると指摘しました。実際にAEIの指摘に基づき上乗せ税率を計算すると、ほとんどが10%に低下します[図表1]。

関税協議は基本税率と製品別税率が焦点か、米国にも影響する関税は引き下げ交渉余地あり

図表をみるかぎり、米政権が公表した上乗せ関税は極めて高いため、これを90日間停止することによって、一律10%の基本税率のみの発動としたことは、AEIの指摘を受けた修正とも考えられます。なお、AEIはUSTRの計算式について、経済理論や貿易法のいずれにも基盤がないと述べており、また、USTRが引用した論文の筆者の1人も、USTRの計算は間違っていると指摘しています。

 

これらを踏まえると、90日後の上乗せ税率再発動の恐れは小さいように思われ、日本をはじめとする主要国と米国との関税協議は、10%の基本税率と自動車など製品別関税の引き下げに焦点が絞られることも想定されます。なお、トランプ氏は4月14日、輸入自動車・部品に対する関税の一時免除の可能性を示唆するなど、米企業への配慮を示しており、米経済にも影響が及ぶ高い関税率については、引き下げを交渉する余地は十分あるとみています。

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米上乗せ関税の90日停止は関税率の計算相違の修正か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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