夫「自分の子供がほしいから離婚してくれ」…法律で認められた、さまざまな離婚理由【弁護士が解説】

夫「自分の子供がほしいから離婚してくれ」…法律で認められた、さまざまな離婚理由【弁護士が解説】

夫の「自分の子どもがほしい」という理由で、某女性タレントが離婚したことが話題になりました。世間では「仕方ない」と受け止める意見と「初めからわかっていたのでは?」と批判する意見とにわかれており、ご本人に対しては「潔い」と肯定的に受け止める意見が多数となっていました。本記事では、法律で認められたさまざまな離婚理由について、Authense法律事務所の白谷英恵弁護士が解説していきます。

不妊と離婚

配偶者が妊娠できないことは、法律上の離婚理由になるのでしょうか?

 

民法の定める「その他婚姻生活を継続し難い重大な事由」は、不貞や悪意の遺棄などの非常に重大な事情と「同等のレベル」でなければなりません。命の危険を感じるほどの暴力や、被害者が精神を病んでしまうほどのモラハラであれば、誰しもが離婚すべきと考えます。

 

しかし相手が不妊であっても平気で婚姻を継続する人はいますし、そもそも子どもを作らない夫婦もたくさんいます。このような状況に鑑みると、相手の不妊が「婚姻を継続し難い重大な事由」とはいえないでしょう。

 

単に「相手が不妊」というだけでは、裁判を起こしても離婚を認めてもらうことは不可能です。今回の件でも、もしも夫からの離婚申し入れを拒絶し、夫が調停、その後訴訟を起こしたら、離婚請求が棄却されて婚姻関係が継続していた可能性があります。

 

不妊であることを隠されていた場合

相手が不妊であることは、基本的に法定離婚理由として認められませんが、もしも結婚時に相手が不妊であることを隠していたら離婚できるのでしょうか? その場合でも、基本的には離婚は困難と考えられます。

 

理由なく性交渉に応じないセックスレスが離婚原因として認められる可能性はありますが、不妊の事実を告げなかっただけでは一般的に婚姻生活を継続し難い重大な事情とは言いがたいでしょう。

 

しかし婚姻時に、夫(あるいは妻)が相手に「どうしても子どもがほしい、それが結婚の条件だ」と伝えており、相手もそれを知りつつあえて「不妊ではない」などと虚偽の説明をしていて「子どもができるかどうか」が2人にとって非常に重要な事項であった場合などには、離婚が認められる可能性もあります。

 

婚約期間に相手の不妊が明らかになった場合

婚姻前に相手の不妊が明らかになった場合には、婚約を解消する正当事由となります。相手の不妊を理由に婚約を解消しても、「不当破棄」と言われて慰謝料請求される心配はありません。

 

不妊が理由で婚姻関係が破綻してしまった場合

単に「相手が不妊体質(高齢である場合も含む)」では法律上の離婚理由になりませんが、もともとは不妊が理由でも、それによって夫婦仲が極度に悪化してしまったら離婚原因として認められる可能性があります。

 

たとえば妻が不妊のケースにおいて、夫が妻に離婚を求めたとします。当初は妻も離婚を拒絶しましたがだんだんとお互いに険悪になり、家庭内別居状態になります。その後夫婦は別居して長期間が経過し、お互いに没交渉な状態が続いています。

 

そのようななか、夫が妻に離婚訴訟を申し立てた場合、裁判所は「夫婦関係がすでに破綻している」と認定して離婚を認める可能性があります。

 

セックスレスが原因で離婚が認められる場合

一方当事者が不妊体質であることによりお互いの心が離れてしまった場合、性交渉がなくなってセックスレス状態となる可能性も考えられます。一般的に、若くて健康な夫婦では、正当な理由もなくどちらかが性交渉を拒絶し続けていると婚姻関係の破綻が認められるケースがあります。そこで不妊が原因であっても、長期間セックスレスの状態が続いていたら、離婚が認められる可能性があります。

 

どちらかが不貞した場合

相手が不妊である場合、夫婦関係がぎくしゃくして不倫に走ってしまう方がいます。その場合には、「不貞」が成立するので法律上の離婚原因が認められます。

 

ただしこの場合、離婚を請求できるのは「不貞された側(不妊の配偶者)」であって「不貞した側(不妊に不満を抱いている配偶者)」ではありません。不貞した側は自分が離婚原因を作り出した有責配偶者なので、離婚請求できません。

 

たとえば妻が不妊体質で夫が妻に飽きて別の女性と不倫した場合、不妊体質の妻の方から夫に離婚請求できますが、夫から妻への離婚請求は不可能です。また相手の不貞が理由で離婚する場合には、慰謝料も請求できます。

世の中の変化に法律や裁判所も対応していく

現代社会では男女ともに晩婚化も進んでいますし、今回の事例のように女性が高齢で結婚するケースも増えています。不妊体質の方も多く、不妊を理由とした離婚事例も増加してくることが予想されます。

 

一方で子どもを望まない夫婦も多数存在します。法律や裁判所が、こういった世の中の変化にどのように対応していくのか、今後も注視していきたいところです。

 

 

白谷 英恵

Authense法律事務所

 

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