(※写真はイメージです/PIXTA)

人生最高のイベントともいうべき「結婚」「出産」「住宅購入」。もちろん、幸せなことには違いありませんが、そのような「ライフプラン」にあわせて、資金計画をしっかり立てておくこともまた重要です。今回、都内在住のいわゆる「パワーカップル」、Mさん夫婦の事例をもとに、「FP事務所MIRAI」のCFP、山﨑裕佳子さんが詳しく解説します。

ママ友から聞くタワマンの生活レベルに翻弄

無事に復職し、これで一安心かと思いきや、同じタワマンに住むママ友たちとの付き合いが妻を悩ませることになります。


タワマン住まいの家庭の世帯年収は高く、おのずと生活レベルも上がります。育休中に知り合ったママ友たちも例外ではありませんでした。子どもにスイミング、ピアノ、英会話など、複数の習い事をさせていたそうです。世間では、共働き世帯が増えているといわれていますが、タワマンでは、専業主婦家庭も珍しくなかったといいます。

 

そして、ご近所のママ友から、昨今のお受験事情について聞くことになります。


都内では、十数年前から中学受験が過熱しています。妻もそのことは承知していましたし、漠然と中学からは私立という心構えはしていました。しかし最近は、教育に熱心でお金に余裕のある家庭では、受験の前倒しが起こっているというのです。


妻は、競争率の高い中学受験を避けて、小学校受験を検討している家庭が多いことを知り、経済的不安もありつつも、ご近所ママたちの「お受験熱」の勢いに押されて、自身も小学校受験対策に踏み切ることに。

 

小学校受験をする場合、一般的に年中から受験対策のための幼児教室へ通います。Mさん夫婦は、幼児教室の月謝は工面できそうと判断しましたが、共働きのため、送迎に時間を割くことができません。そこで、ベビーシッターに週2回の幼児教室への送迎と、両親のどちらかが帰宅するまでの留守番をお願いすることにしました。

 

基本的に、中学以降にかかる教育費の確保は、小学校卒業までの間を準備期間として、資産形成することができます。高校まで公立を選択する場合、高校卒業までに大学費用を準備すれば、間に合います。

 

しかし、小学校受験をする場合、教育費の準備期間はなく、あらかじめ教育費の確保がない場合は、月々の家計費やボーナスから費用を捻出することになります。Mさんの家計は途端に厳しくなりましたが、幼児教室を楽しんでいる子どもの姿を見ると、引き返す決心ができなかったといいます。

 

このとき、妻は44歳。お金の不安が増すなかで、精神状態が一時期不安定になり、不安感や焦燥感から高額な買い物を繰り返すようになってしまいます。家計は崩壊寸前です。夫は、ようやく事の深刻さに気付きました。

ライフプランの変更に対応できる資金計画が大切

Mさん夫婦は家計を立て直すべく、FP相談に来られました。

 

「まさかこんなことになるとは……。独身時代の感覚で、月15万くらい余裕で返せると、甘く見てました……」と、憔悴する妻。Mさん夫婦のように、住宅購入時には想定していなかった生活スタイルの変化で、住宅ローン返済に行き詰まるケースは珍しくありません。

 

ちなみに、小学校6年間で保護者が支出する「子ども学習費」の総額は、公立小では約211万ですが、私立小では約1,000万円というデータがあります。この費用には、学費の他に給食費、学校外活動費などすべてが含まれていますが、両者の差は、非常に大きいものとなります。

 

Mさん夫妻からのヒアリングの結果、二人の子の小学校受験を優先したいとのことでしたので、タワマンは売却し、住宅ローンを精算して、同地区の中古マンションへの転居を提案しました。幸いにもタワマンの資産価値が高かったため、マンションの売却費で、住宅ローンの残債を返済できそうです。

 

また、今後はお互いの収入をオープンにしたうえで、家計を管理し、住宅ローン返済や教育費を確保していくことを提案しました。

 

【中古マンションの購入費&返済プラン】

・物件価格:6,000万円

・頭金:0円

・借入額:6,000万円

・借入金利:1.78%(全期間固定型)

・返済期間:25年

・月々返済額:約24.8万円(ボーナス返済なし)

 

今回、住宅ローン借入れは、固定金利(全期間固定型)でシミュレーションしています。
家計に余力がある場合は、変動金利も選択肢ですが、教育費を優先したいMさん夫婦の場合、金利上昇におびえることなく、安定した家計管理ができる固定金利のメリットは大きいと考えます。

 

知っておきたい「ペアローン」の落とし穴

昨今、共働き世帯の増加と首都圏の不動産価格の高騰により、20代〜30代の共働き世帯では、ペアローンを利用するケースが増えています。二人でローンを組んで借入額が増やせれば、理想の物件に手が届きやすくなりますし、住宅ローン控除をダブルで受けられるというメリットもあります。

 

しかし、「借りられる金額」=「返済できる金額」ではないことを、念頭に置いておく必要があります。収入に対して返済比率が高い場合、どちらかの収入が減少したり、家族構成が変わったりした場合、途端に返済に窮してしまいます。

 

先のことを予測することは難しいですが、将来起こり得る変化に対応できるような資金計画が大切でしょう。
 

 

[出典]
文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」

三菱UFJ銀行「住宅ローン借入可能額シミュレーション」

 

 

 

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI

 

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