正体を明かすと…
両親が亡くなった直後は、さまざまな方から、お悔やみや励ましの言葉をもらいました。しかし、すべての方が同じ想いを持っているわけではなく、日常生活が落ち着いてくると、ときには、慰謝料が入ったならお金を貸してほしいなど、心なく急に連絡をしてくる人もいます。
Aさんは、まとまったお金が入る、財産を持っているということがわかると、人間不信になりかねないと、静かに質素に暮らすことを選びました。「人の噂も七十五日」ということわざもあります。住宅ローンがあった等の支払いもあり、財産は少なくなっているということを伝えると、次第に忘れ去られていきます。
実はAさんは以前、別の運送会社に勤めていました。仲良くなった同僚に酔った勢いで資産額を話したんです。同僚が言葉を失い、酔いが醒めたので「しまった」とは思いました。そうしたら案の定、次の日には社内で噂になっていて。居づらくなって転職しました。
苦い経験をしたことで、さらに資産を増やしたとしても、世間からみえる身の丈にあった生活をしようと決め、定職としてバスの運転手を選びました。「はたから見れば冷やかし程度に働いているように見えると思います。本当にお金を持っている人と持っていない人とでは、いつ辞めてもいいかどうかという点で全然違いますから。実際、そうみられても、そのとおりだとも思います」Aさんはいいます。
いまは両親のことがあってなのかはわかりませんが、バスの運転手をしながら、好きな投資をして暮らすに至っているのです。
今後は…
Aさんは、バスの運転手をやらずとも、投資家として十分にやっていけるだろうと思われますが、今後結婚予定のAさんにとって、配偶者やお子さんができたときの子どもへの影響であったり、Aさん自身の世間体だったりと、お金があることでの悩みが出てくる可能性があるのかもしれません。現在は、バスの運転手であることで、社会保険に加入することもできます。
「今後も日ごろの暮らしは質素にし、投資を続けていきます」と語っていました。
総務省統計局の家計調査:貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上の世帯)(2022年)
https://www.stat.go.jp/data/sav/2022np/pdf/summary.pdf
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:2022年ユースフル労働統計
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2022/documents/useful2022.pdf
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表