企業の「安全性分析」には限界もあり!?
一般的に、企業の倒産の危険を見るには安全性分析をすべきとされています。安全性分析とは、どれだけ支払い能力があるかといった企業の健全性を判断するものと言われています。しかし、安全性分析だけでは見抜けない倒産も多い、というのが私の所感です。
もちろん安全性分析のすべてを否定するわけではありませんが、限界もあります。安全性分析では、貸借対照表(以降、BS)の値しか使用しないため、資産の持っている価値の実態を評価できないからです。
私は職業柄、非常に多くの財務分析の本を読んできました。多くの財務分析の本を読んできて感じるのは、根拠があいまいな文章が非常に多いということです。「〜と言われています」とか「〜と考えられています」とか「〜が一般的です」など、著者が何かの根拠があって主張しているのではなく、どこかの一般論を書いていると思われる文章がたくさんあります。
流動比率だけをとっても、ある本では150%以上が良いとされていますが、ある本では200%以上が良いとされていたりします。こういうことが、財務分析の本にはザラにあります。もちろん、業種や企業規模によって異なるということかもしれませんが、そういう注意書きのない本も結構あります。
もし、皆さんが財務分析の本を読まれるならば、「〜と言われています」とか「〜と考えられています」とか「〜が一般的です」という部分は、たとえ有名な公認会計士の先生やコンサルタントの方が書いたものでも、相当に大雑把な話か、根拠が曖昧な話が書いてあるのだなと思って読まれることをお勧めします。
安全性分析に用いる財務指標の概要と注意点
基本的に、私が提唱する倒産予知分析では、安全性分析はあまり使用しません。そこで、安全性分析に用いる財務指標の概要と、注意点について確認したいと思います。ある公認会計士の先生が書かれた本では、次の5つの指標で安全性を判断するべきだとありました。
①流動比率
②当座比率
③固定比率
④固定長期適合率
⑤自己資本比率
この5つの安全性の各指標について確認していきましょう。次回以降、財務分析の本に記載さている《ある本に記載されている内容》と、私の考えである《著者の視点》に分けて記載します。