前回は、事業の後継者による「新体制づくり」のポイントを取り上げました。今回は、事業承継を成功に導くための「業界動向・同業他社」の分析について見ていきます。

業界内での「自社のポジション」を明確にする

自社の分析にあたっては、まず業界動向や同業他社の情報を見極め、一体、自分の会社は業界内においてどういったポジションにあるのかを明確にしておくべきです。たとえば、自社が本業としている業界は、トータルに見てどのような状況にあるのでしょうか。

 

▪今後も市場が拡大していく見込みはあるか

▪周辺事業を取り込んでいく需要はあるか

▪拡大傾向はなくとも、安定して継続していける見込みはあるか

▪業界再編が進んでいる、またはこれから起こりそうな業界ではないか

 

まずこのようなことについて考えてみるのがよいでしょう。

 

ちなみに、同業他社の情報については、どこまで把握しているでしょうか。もちろん各社の製品、人事などの最新情報について、経営者の皆さんは日頃からアンテナを高く張り、情報収集に余念がないことと思われます。その情報を元に、自社の製品、サービスの価格や品質のさらなる向上に邁進されてきただろうことは言うまでもないはず。

現状分析作業で専門家の力を借りる意味とは?

確かに「会社四季報」や会社案内に載っているような公式データ、財務状況などの公開情報は誰もが得られるものです。しかし、仮にどれほど情報を調べ上げたとしても、次にそれを比較検討しなければ意味がありません。

 

自社の絶対的評価の部分については把握・分析ができるけれども、他社比較を通して、自社の相対的な立ち位置へとフィードバックをしていくことが難しい。情報ソースがないために、深い分析ができず「何となくこうであろう」といった感覚的な比較にとどまってしまう。そんな声をよく聞くことがあります。だからこそ、現状分析作業において専門家の力を借りる意味が出てきます。

 

精緻な分析が必要になる局面では、どうしても自分だけの手には負えないことが多くなり、第三者の導入が非常に効果的となります。手に余ることを放置してしまわず、専門家の力を借りてその知見を交えながら進める、あるいは大半を任せて進めていけばよいのです。

 

今まで辣腕を振るってきた経営者には軟弱な態度に思えるかもしれませんが、これこそが短期間で事業承継を達成する大きな鍵となります。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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