しくじった!増額狙いの「公的年金繰下げ」だが…繰下げるともらえない年金・繰下げても増えない年金に要注意【CFPが解説】

しくじった!増額狙いの「公的年金繰下げ」だが…繰下げるともらえない年金・繰下げても増えない年金に要注意【CFPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

公的年金の受給額を増やせる「繰下げ受給」ですが、場合によっては、繰下げることでもらえなくなる年金、繰下げても増えない年金もあるので要注意です。本連載は、ファイナンシャルプランナーの福地健氏監修の書籍『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2024-2025年最新版』(インプレス)より一部を抜粋・再編集したものです。

「受け取れなくなる年金」に注意!

年金の繰下げをすると、1カ月で0.7%、1年間で8.4%も年金額が増えるお得な仕組みです。老後のお金を増やすためにも利用したい制度ですが、場合によってはデメリットもあります。この点を理解して、繰下げするかの判断をすると良いでしょう。

 

まず1つ目は、「特別支給の老齢厚生年金」は、繰下げ対象外。これは、65歳までの有期年金となるため、繰下げできません。65歳以降にもらう年金の繰下げは改めて手続きできるため、特別支給分は受給した方がお得です。

 

*老齢厚生年金の受給開始年齢引上げに伴い、60~64歳までの間に特別支給される老齢厚生年金。男性は1961年4月1日以前、女性は1966年4月1日以前生まれの場合、支給対象

 

[図表1]「繰下げ」をするときに注意すべきポイント①

 

2つ目は、「加給年金」を受け取れる人が、繰下げをすると、繰下げ期間中は加給年金を受け取ることができません。そのため、配偶者が繰下げ期間中に65歳に達すると全額受け取り損ねることになります。加給年金は厚生年金の制度なので、繰下げ期間中に加給年金の受給権が発生する人は、老齢基礎年金のみを繰下げし、老齢厚生年金は繰下げせずに受給開始することで回避できます。

 

[図表2]「繰下げ」をするときに注意すべきポイント②

繰下げしても増額しない年金がある

3つ目は「在職老齢年金制度で減額になった部分の年金は、繰下げ増額の対象外のため、本来繰下げることでもらえる年金額より少なくなります

 

在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金の受給者が厚生年金に加入して働いた場合、年金+月給が50万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全額が停止(減額)となる制度。在職老齢年金制度が適用される人が繰下げをする場合、将来の年金額にも影響するため、65歳以降の働き方には注意が必要です。なお、老齢基礎年金については、この制度の対象とならないため、増額される金額に影響はありません。

 

[図表3]「繰下げ」をするときに注意すべきポイント③

 

2022年度の(厚生労働省年金局)繰下げ状況は、老齢基礎年金は2.0%、老齢厚生年金は1.3%。年々利用率はアップしているものの、ほとんどの人が繰下げを利用していない状況です。ですが、人生100年時代を生き抜くためにも、年金が増える繰下げを検討することも選択肢の1つです。

 

 

福地 健
ファイナンシャル・プランナー
社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング顧問
(株)近代セールス社前代表取締役社長
CFP®(日本FP協会元理事)

 

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※本連載は、福地健氏監修の書籍『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2024-2025年最新版』(インプレス)より一部を抜粋・再編集したものです。

いちからわかる! 定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2024-2025年最新版

いちからわかる! 定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2024-2025年最新版

監修:福地 健

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