重要なのは「サンクコスト」という考え方
合理的に考えるなら「買った値段より上がっているか、下がっているか」ということは、売るか否かの意思決定には関係ないはずなのです。1,000円で買った株であろうと500円で買った株であろうと、いまの株価が800円なのであれば、将来の株価が800円より高くなりそうか否かだけ考えればよいのです。
買ったときに払った代金は「サンクコスト」です。これはサンキューのサンクではなく、「沈んでしまった」という意味の英単語で、「株を売っても持っていても戻らない金」という意味です。どうせ戻らないなら、過去のことは忘れて未来志向で「売るのと売らないのと、どちらが金持ちになれるだろう?」ということだけを考えればよいのです。
サンクコストに囚われないようにするためには、毎朝すべての株を売り、新しく買い直すとよいでしょう。もちろん、実際に売買すると手数料も手間もかかりますから、「売ったつもりになる」だけでいいのですが、そうすれば、買ったときの値段に左右されることはありませんから。
余談ですが、サンクコストという考え方は、色々な場面で重要です。たとえば買った本を読み始めたらつまらなかった、という場合「買ったお金がもったいないから」と思って最後まで読む人も多いのですが、結果として「買ったお金」と「読んだ時間」の両方を損することになるのです。買ったお金はサンクコストなので忘れてしまい、「いまから幸せになるために本を読むか散歩に行くか」だけを考えればよいのです。
自ら「損になる行動」をとるなんて…
もしかすると、投資初心者の中には「損が確定すると、こんな株を買った自分が愚かだった、と思ってしまうから、売りたくない」と考える人がいるかもしれません。自分に見栄を張って合理的でない投資判断をするわけですね。
他人に見栄を張るために損を承知で行動するというのであれば、ある程度理解はできますが、自分に見栄を張るために損切りをせずに塩漬けにする、というのはとてももったいないことですね。
投資に慣れてくると「儲かったのは幸運、損したのは不運」だと割り切れるようになるかもしれません。そうなれば、「この銘柄を買ったのは不運だった。不運な銘柄とは早急にお別れして、別の銘柄で運試しをしよう」と思えるようになるでしょう。
本稿は以上ですが、投資判断等は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があります。
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塚崎 公義
経済評論家
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