「あなたには娘として、親を看る責任があるのよ!?」
ところが女性は過労がたたったのか、運悪くコロナに罹患。2週間ほど母親のもとに通えない日が続いた。
さすがに女性に同情した兄と弟とともに、ケアマネージャと相談し、母親を老人ホーム入居させようと動き始めた。
女性の母親は75歳。施設の入居期間は5年以下といわれているが、長期の入居も想定し、月額費用は母親の年金額の月15万円で収まるところをターゲットとし、入居金はゼロか、できるだけ少ないところを狙った。そして、面会に行きやすい距離感であることも外せない。
きょうだい3人で血まなこになって探した結果、奇跡的に条件にマッチた施設が見つかり、母親に入所してもらうことができた。
ところが、ホーム入所から1カ月ほど経過したところ、施設から女性のもとに緊急連絡があった。なんと「母が施設からいなくなった」というのである。
施設の従業員の探索により、すぐに母親は見つかったが、「家に帰して!」と叫び、落ち着くまで大変だったという。しかしその翌日、母親はまたしても施設から逃走。そしてなんと、女性の自宅へやってきたのである。
「親をあんな所に押し込めて、娘として恥ずかしくないの!?」
「あなたには娘として、親を看る責任があるのよ!?」
と激怒。
「娘だからって、そんなことをいわれても…。子どもの責任は平等じゃないでしょうか…」
施設からやんわりと「迷惑です」といわれてしまい、兄と弟からは「俺たちにはどうしようもない」頭を下げられたうえ、下駄を預けられた格好になってしまった女性。なんとか施設に戻ってもらったが、とてもこのまま落ち着いてくれるとは思えないという。
「みんながみんな、ウチの引き取りを希望しているのはヒシヒシとわかるのですが、とてもじゃないですが、応じることはできなくて。〈もうムリ、ごめんね〉って…」
兄と弟、そして母親との攻防はまだ続きそうだという。女性が意思を通すことはできるのだろうか。
介護問題の裏側には、介護する側・される側の「べき論」があり、それが事態を一層複雑にしているのかもしれない。
[参照]
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