「世帯月収43万円の家族」住宅ローンを払えるか?
住宅購入は、多くの人にとって人生の一大イベントです。しかし、その背後には大きな経済的負担が伴います。住宅ローンを組む際には、多くの人が「なんとなく」勧められるままに契約し、後でその重みを実感することが少なくありません。
国土交通省『令和4年度 住宅市場動向調査』によると、住宅ローンの年間返済額は全国平均で174.0万円、三大都市圏平均では183.1万円となっています。これは月々の返済額に換算すると、全国平均で約14.5万円、三大都市圏では約15.3万円です。
さらに詳しく見ていくと、分譲戸建住宅取得世帯の年間返済額は平均126.6万円、分譲集合住宅取得世帯では平均148.1万円です。これらの数字は、それぞれ月々約10.6万円、約12.3万円に相当します。中古住宅の場合はさらに低く、中古戸建住宅取得世帯では年間106.7万円、中古マンション取得世帯では101.3万円となっており、月々約8.9万円、約8.4万円となります。
住宅ローンの返済負担率は、分譲戸建住宅取得世帯で平均18.8%、分譲集合住宅取得世帯で平均17.4%です。これを考慮すると、家計における住宅ローンの重みが浮かび上がります。
厚生労働省『2023(令和5)年 国民生活基礎調査』によれば、日本の平均世帯年収は524万2,000円で、月収ベースでは43万円、手取りは約34万円です。この手取り額から食費、光熱費、教育費などの生活費を差し引いた上で、月々10万円以上の住宅ローンを返済することは、非常に大きな負担となります。
住宅金融支援機構『住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】』によると、変動型や固定金利選択型で住宅ローンを組んでいる人のうち、商品特性やリスクに関する理解度について「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」とする回答が40%~50%を占めています。これは、多くの人が十分な理解を持たずに住宅ローンを契約している現状を示しています。
山本さん(仮名)は、40代の会社員で、不動産業者など周囲の勧めに従って住宅ローンを組みました。当初は新居での生活に期待を膨らませていましたが、次第にローン返済の重みを実感するようになりました。月々の返済額は約14万円で、年間では168万円に達します。これにより、生活費の切り詰めを余儀なくされ、日々の生活が厳しくなっていきました。
「最初は大丈夫だと思っていましたが、毎月の返済がこれほど大変だとは思いませんでした」と山本さんは語ります。彼の年収は600万円ほどですが、手取りは約40万円。その中で毎月14万円をローン返済に充てると、残りはわずか26万円です。これでは食費や光熱費、その他の支出を賄うのが厳しくなり、さらには将来の貯蓄もままなりません。